4Kデジタルシネマ映像制作

ENGカメラとの使い分け

近年話題になることが多いデジタルシネマカメラ。弊社でも4Kカメラを導入して運用を開始いたしましたが、お客様から「今後4Kデジタルシネマ中心でいくのか?」というお問合せをいただくことが多くなりました。弊社の答えは一貫して「4Kを推進してまいりますが、適材適所であろうと考えています。」というものです。
まず、現在のところ、完パケで4Kが求められる場面は限られています。4K収録を行ったとしても完パケがHDですので、HDにダウンコンバートした際にどのようなクオリティが得られるか?が大切です。また、4KデジタルシネマカメラとHD(ハイビジョン)ENGカメラは性質がまったく違いますので、その特性を上手に活用しながら使い分けるほうが結果として望ましいのは言うまでもありません。
両者を比較した場合、以下のような特性の違いがあります。

  4Kデジタルシネマカメラ HD-ENGカメラ
解像度 4K HD
機動性 低い 高い
フォーカス 浅い 深い
ガンマ特性 logガンマ ビデオガンマ

機動性の高いENGカメラ

まずENGカメラの利点は高い機動性です。ENGとは「エレクトリックニュースギャザリング」という概念から生まれた言葉です。ニュースを電気的に集めてくるという意味合いの言葉ですが、そもそもニュース取材用として街に持ち出せるカメラという意味です。
ENGカメラ登場以前は、テレビも含めニュース取材はもっぱら16ミリフィルムカメラで行われていました。しかしビデオが小型化すると、このビデオデッキとテレビカメラを接続して街に持ち出し、取材ができないかという概念が生まれました。これがENGとして発展していきます。
こうした概念を実現するために、ENGカメラは「機動性」ということを第一に発展してきました。
もちろんENGは放送用ですから画質が優れていることは言うまでもありませんが、ニュース取材に使用するため、即座にすぐ回せる、チャンスを逃さないという、プロの道具としての機動性が求められたのです。
電源を入れた瞬間からの安定性が高いことは当たり前。壊れにくいことも当たり前。しかも軽いばかりか全体の重量バランスが優れていて肩に担いだときに疲れにくいという人間工学的な考え方も必要です。そのノウハウはSONY、Panasonic、そして池上通信機など主要なENGカメラメーカーがそれぞれ競い合うように磨き上げてきたものです。
また、ENG用のレンズも優秀です。明るく高倍率で、一本の標準レンズで広角から望遠まで、物によっては数十倍ものズームがきくレンズです。どのような場面においても標準ズームとワイドズームの二本のレンズがあれば収録することができます。ほとんどレンズ交換の必要性がないというのもENGカメラにとっては大きなアドバンテージになっています。
弊社が主体として撮影しているようなドキュメンタリーにおいても、ENGカメラの機動性は活きてきます。どのように動くかわからない被写体を追跡取材するためにはENGカメラの持つ機動性は欠かせません。安価で小型のハンドヘルド(手持ち)カメラがプロの現場にまで普及している現在でも私たちデキサがENGカメラにこだわり続けているのも、こうした理由からです。

反面、デジタルシネマカメラは運用に大きな問題があります。基本的にレンズは単焦点でズームがありません。そのため数本のレンズを交換しながら撮影することになります。弊社では機動性を重視してズームレンズを中心に運用していますが、ENGカメラのような機動性は望めません。
重量についてもカメラ本体だけならそれほど重たいものではありませんが、補機類を使用して回せる状態での重量がまだまだ重たいという致命的な欠点があります。

フォーカスの薄さが利点にも欠点にもなるデジタルシネマ

デジタルシネマカメラというと、スーパー35mm相当という大判の撮像素子が生み出すフォーカスの浅い映像が好印象で迎えられています。あたかも一眼レフで撮影した写真が動き出すような鮮烈な印象の映像撮影が可能になりますが、このフォーカスの薄さも、時と場合によっては欠点にもなります。
弊社が撮影を行う現場は様々です。ドキュメンタリーの現場や、商品撮影の現場など、まったく性質が違う現場が混在しているのも弊社の映像制作現場の特徴です。
例えば商品撮影。台の上に商品を並べて撮影できますし、照明もきっちり決めて撮影することが可能な場合なら、デジタルシネマの長所が活きてきます。見せたい箇所だけを見せ、それ以外の部分はフォーカスをぼかしてしまえるので、映像演出的には「制作者が何を見せようとしているのか?」が明確です。また、見せたくない部分をぼかしてしまうことで、印象としてキレイな仕上がりになります。こうしたボケを活用した撮影は、スーパー35mmに比較して半分程度の対角線サイズしか無い2/3インチ(2/3型)撮像素子が中心のENGカメラではなかなか難しい表現です。
反面、被写体がどう動くか予測しにくい上、照明も決まっていないドキュメンタリーの現場では、大判撮像素子を搭載したデジタルシネマの「ボケやすい」という性質が悪さをします。被写界深度(フォーカスが合う範囲)が浅いのでカメラマンの意識がフォーカスにかなり割かれてしまい、撮影しにくいのです。どんなに鍛錬を積んだカメラマンでも、どう動くかわからない被写体にフォーカスし続けることは物理的に不可能です。
その点ENGカメラならフォーカスの合う範囲が広いので、ある程度合わせれば、見た目にフォーカスの甘さを感じることはありません。最終的な完成度を考えると、商品撮影ではデジタルシネマカメラ、追跡取材ではENGカメラという使い分けを行うのが得策であることは言うまでもありません。

logガンマビデオガン

大まかに言うと、撮影時に黒(最暗部)から白(最明部)の幅(ダイナミックレンジ)を圧縮して撮影し、編集時に戻すというのがデジタルシネマの考え方です。これなら撮影した素材段階では普通なら白く飛んでしまうような明るいところも、つぶれてしまうような暗い部分も、その階調が残ります。しかし、この圧縮を元に戻す際には、ダイナミックレンジの中間部分を拡大して使用するため、最終的な仕上がりの階調はビデオガンマで撮影した場合に比較してわずかではありますが、減ってしまいます。
ENGカメラはビデオガンマですから、撮影中に露出でいらない部分を飛ばしたり、つぶしたりしながら取捨選択し、必要な部分に100%のダイナミックレンジを割り当てながら撮影することができますので、結果として階調表現はこまやかになります。この問題点に触れているメディアは専門書であってもあまりありません。
デジタルシネマカメラを製造している各社や規格策定団体は苦労して「なるべく美しく見えるlogガンマ」を開発していますし、撮影フォーマットにおける階調が多くなるように10bitや16bitなどで撮影を行いますので、最終的に8bitのBlu-rayや放送における見た目には大きな問題はありませんが、微妙なところで欠点にもなりかねない問題ですので、もっと議論されてもよい問題点ではないでしょうか。
流行となっているデジタルシネマカメラによるlogガンマ撮影ですが、このように一概に利点ばかりと言えないことも理解しておく必要があります。

使い分けが重要です

上記のような観点から、弊社デキサではHD完パケ作品においては以下のようなカメラの使い分けを行う方針でおります。

追跡取材 ハイビジョンENGカメラ
商品撮影 4Kデジタルシネマカメラ
風景撮影 4Kデジタルシネマカメラ
過酷な環境下での撮影 ハイビジョンENGカメラ

tukaiwake新しい道具が登場した際には、映像に限らずどの業界でも、それをいかに取り入れていくかが肝心です。そしてその方針を誤ると、結果として新しい道具の性能を活かしきれないばかりか、結果として制作される映像作品そのもののクオリティを下げてしまう危険性すらあります。
弊社はデジタルシネマカメラにばかり注目が集まっている今の映像業界のあり方そのものに問題提議を行いながら、正しい導入方法を模索してまいりたいと思っております。

時代を追いつつ基本に忠実な映像制作技術

デキサはテレビ番組からウェブ動画まで、一貫して「高いクオリティをリーズナブルに」というポリシーで制作を続けています。

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視聴者の眼を釘づけにする映像演出の紹介。
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最新技術を駆使したデキサの映像撮影技術。
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作品を活かすも殺すも編集次第。その秘訣を紹介。
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※ENGカメラの撮像素子は通常「2/3インチ」と言われますが、実際にはそのイメージングサイズの対角線は11㎜前後です。このイメージングサイズを規格上は「2/3型」と言います。これは昔の撮像素子として使われた真空管の一種である「撮像管」の直径から換算しているからです。例えば直径2/3インチの撮像管の断面で描けるイメージングサイズはおよそ対角線11㎜であるため、このサイズを「2/3型」と呼称するようになりました。こうした由来のため、正確には「2/3インチ」ではなく「2/3型」と言います。2/3型撮像素子のイメージングサイズは、大体16㎜フィルムより少し小さい程度となります。当サイトでは、あくまで一般の方々が理解しやすいように「2/3インチ」の呼称を用います。
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