4K編集の流れ
4K編集の流れはHD編集とは若干異なります。使用するカメラがまだデジタルシネマ型しか業務用として通用するスペックのカメラが無いため、通常テレビ番組制作の現場で使用されているENGカメラを使用したワークフローのようにダイレクトな編集は通常行わず、必ず「グレーディング」という、色やコントラストの調整作業が入ります。
ここではエンドクライアント様にもわかるようにポストプロダクション業務について触れてみたいと思います。
デジタルシネマカメラの信号特性とグレーディング作業
デジタルシネマの編集を理解するにはまず、通常のプロ用のENGカメラを理解する必要があります。ENGカメラの場合は、一般的に撮影した素材の画質を調整することなく、基本的にはそのまま編集されて番組としてオンエアされます。つまり撮影された動画素材の画質規格は、放送される規格とイコールです。撮影段階で何かトラブルでもない限りは、色調整やコントラスト調整が行われることは、あまり多くはありません。(実際には編集段階で多少の色合わせ程度には調整が行われますが、その調整幅は大きくはありません。)
ダイナミックレンジという概念
ビデオというのは記録できる明るさに幅があります。暗い部分はつぶれますし、明るい部分は白く飛びます。この黒から白までのコントラスト幅を「ダイナミックレンジ」と言います。
細かい話は割愛しますが、(といより、かなりザックリと解説しますが、)ENGカメラの場合は、カメラの撮像素子が持っているダイナミックレンジを使い切るように撮影しています。黒、つまりRGB全部のチャンネルが0の状態から、白、つまりRGB全部のチャンネルが100の状態までのダイナミックレンジをうまく使い切って、撮影段階で最良の露出を作り上げて撮影するのです。ですから被写体の背景の窓の外など、白く飛んでしまって問題ないところは遠慮なく飛ばしてしまいますし、影の部分は黒くつぶしてしまいます。
みなさんがビデオ撮影する際にも、ファインダーをのぞきながら、同じように無意識にこの作業をされているはずです。例えば人の顔を見せたいなら、その顔に露出を合わせているはずです。その結果背景が飛んでしまうこともあるでしょうし、黒くつぶれてしまうこともあると思います。つまり被写体の「見せたいところ」にダイナミックレンジの中間階調を持ってくるように露出を決定して、限られたダイナミックレンジの中で「見せたいところがよく見えるように」しているわけです。オートで撮影される場合も、カメラが自動的に全体の明るさを見ながら、同じような判断をしているのです。
しかしこうした情報の取捨選択を撮影段階でやってしまうと、編集段階で修正がききません。白く飛んだところの情報はダイナミックレンジの上側に外れていますので階調の情報が残っていませんから細かい陰影を再現することができませんし、逆に黒くつぶれたところもダイナミックレンジの下側に外れてしまい、再現することはできません。
ネガの特性に似せた階調特性≒logガンマ
では映画撮影で使われているネガフィルムの場合はどうでしょうか?ネガフィルムはアナログ(化学反応的)記録のため、このダイナミックレンジが広く、白く飛んでいるように見える部分でも元のネガフィルムには細かい階調が残ります。逆に黒い部分にも細かい陰影が残っているのです。ですから撮影後に調整を行うこともある程度は可能です。こうした「ねばり強さ」こそネガフィルムの強みであり魅力です。
そこでデジタルシネマでは、このネガフィルムの「ねばり強さ」を再現するために、明るいところを暗めにして、暗いところを明るめにして、ダイナミックレンジを縮めて撮影するのです。これなら本来飛んでしまうような明るい部分や、つぶれてしまうような暗い部分も階調が残ります。これによって、フィルムの現場で行われているような編集段階での色調整や明るさ調整などイメージ作りを可能にしているのです。
上記のような0%~100%の階調の使い方や特性を専門用語ではガンマ特性と呼んでいます。そして、デジタルシネマカメラというのは、この「圧縮したガンマ特性≒logガンマ」を搭載して色調整やコントラスト調整の自由度を広くしているカメラを指すようになりつつあるようです。
圧縮しているので、もちろん編集段階で完全に元に復元することはできませんが、荒っぽい言い方をすると、「まあまあ人の目はごまかせる」というようにうまくコントラストの圧縮特性≒ガンマ特性を考えてあるわけです。
弊社が現場で使用するカメラはSonyのFS7という型式で、S-LOG3というLOGガンマ特性で撮影する機種です。このS-LOG3のLOGガンマ特性も、このようにダイナミックレンジを縮めて撮影する形式です。ですから撮影後に編集する段階で、ダイナミックレンジを戻してやる必要があります。言うなればフィルムで言うところの現像処理を行うようなものです。この現像処理を「グレーディング」もしくは「カラーコレクション」と言います。
デキサの4K編集
弊社デキサでは、扱いなれたAdobeのソフト群を使用してグレーディング作業を行います。
AdobeのシリーズにはSpeedGradeというグレーディング専用ソフトがありますので、編集に使うPremiereと連携した効率的な編集ワークフローを組むことができます。
またPremiereもネイティブで4K対応しておりますので、可能な限り画質を落とさない編集が可能になります。
4K映像を編集するためにはソフト面からの対応だけではなく、編集に使用するハードウェア(PCやワークステーション)も大容量のデータを扱える環境が必要になりますが、弊社ではより速いCPUを使ったマシンを導入するなど常にこうした大容量データを扱う環境を整備しています。
Blu-rayの8bitを活かしきるための10bitXAVCイントラ撮影
Blu-rayの階調は8bitの256階調です。反面、弊社が4K撮影に使っているカメラ、ソニーFS7の撮影素材は10bitの1024階調です。グレーディング作業によって、Blu-rayで記録することができる8bit階調を活かす配分を考えながらグレーディング作業を行うことで、最終的に「美しく見えるBlu-ray動画」に整える自由度が得られます。
確かにBlu-rayの階調が8bitのため、撮影で10bitを使うメリットがどこにあるのか、同業他社の方々からもお問合せをいただきますが、弊社では10bitだからこそ、編集段階での自由度が高くなり、イメージを作りやすいと考えています。
この考え方からすると16bitという広大な階調を持つRawデータであれば、さらに自由度は高くなりますが、現状弊社で受注しているPR映像制作のBlu-ray完パケにおいてはオーバークオリティであると判断し、Blu-ray制作のためには10bitの4K記録ができるXAVCイントラによる収録がジャストサイズであるという考え方で採用いたしました。
チャートやCGも美しく4Kで
今後4Kが普及してくると注目されるテクニックが、モーショングラフィックスや3D-CGなど編集を補完するための素材制作の分野です。
4KによるCG制作
CGはメモリやレンダリングコンピュータのCPUの能力に限界があり、大解像度をどこまで実現できるかはハードウェア次第という性質があります。弊社デキサでは4KによるCG制作をゼロからモデリングしレンダリングできるハードウェアのパワーを自作によって実現しています。強力なハードパワーでこれまでHD制作を行っていた時と同等の時間的コストで4Kを実現します。
モーショングラフィックスも4Kの時代
モーショングラフィックスはコストが低めの作品制作においても活用できるという強みがありますが、ことが4Kともなるとハードパワーを要するため、低コストで制作するということが困難になります。弊社では3D-CGの用途で高い性能のマシンをすでに保有しているため、このマシンの転用で高能率なモーショングラフィックス制作を実現できます。
時代を追いつつ基本に忠実な映像制作技術
デキサはテレビ番組からウェブ動画まで、一貫して「高いクオリティをリーズナブルに」というポリシーで制作を続けています。
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