動画制作ご依頼の際の注意点

映像等は取適法(旧・下請法)の「情報成果物」の扱いです

映像等の制作は、中小受託取引適正化法(以下「取適法」と略します。旧・下請法が2026年に改正された法律です)における「情報成果物作成」にあたります。
テレビ局様や映像制作・番組制作プロダクション様など、弊社と事業内容が類似するお客様が弊社を下請けとして活用する場合、発注主としてのお客様と受注した弊社の関係は、取適法(旧・下請法)の委託事業者(親事業者)と受託事業者(下請事業者)の関係になります。
こうした委託事業者と受託事業者の場合、発注・受注の際には取適法(旧・下請法)に関わる一定のルールがありますのでご注意願います。

また、お客様が放送・映像関連の企業様でなかったとしても取適法(旧・下請法)の精神は様々な他の法律にも反映され類似するものもありますので、現代流の商道徳の一種と受け止めていただいたほうが良いかもしれません。基礎的知識として知っておくべきルールですので、ぜひご一読ください。
またお客様(法人)の資本金が1000万円を超えない場合は、弊社との取引においてこの取適法(旧・下請法)は適用されません。あくまでお客様が資本金1000万円以上の企業様である場合に限り、取適法(旧・下請法)が適用されます。

注意すべき4つの委託事業者(親事業者)の義務とは

基本的に取適法(旧・下請法)は受託事業者(下請事業者)の権利保護のために作られた法律です。しかしいくつかの守るべき事柄を守ってさえいただければ、この法律がお客様にとって何ら障壁になるものではありません。
以下にその「委託事業者(親事業者)の義務」について記載しますが、これらをよくお読みいただければ、通常の商取引の常識と大きく乖離していないことがお分かりいただけるものと思います。

主な4つの義務

義務 概要
発注内容等の明示義務(第4条) 発注の際は,直ちに発注内容を明示すること。
支払期日を定める義務(第3条) 下請代金の支払期日を検査をするかどうかを問わず、給付の受領後60日以内に定めること。
書類の作成・保存義務(第7条) 下請取引の内容を記載した書類を作成し,2年間保存すること。
遅延利息の支払義務(第6条) 支払が遅延した場合は遅延利息を支払うこと。

発注内容の明示について(第4条)

まず発注内容の明示義務という項目です。これはいわゆる「発注書」のことです。この書面に定めなければならない基本的な事柄は決して多くはありません。
なお、3条書面(発注書・契約書)に記載する必要がある項目は、下請法から以下抜粋してご紹介します。

【発注時に明示すべき具体的事項】
① 委託事業者及び受託事業者の名称(番号,記号等による記載も可)
② 製造委託,修理委託,情報成果物作成委託又は役務提供委託をした日
③ 受託事業者の給付の内容(委託の内容が分かるよう,明確に記載する。)
④ 受託事業者の給付を受領する期日(役務提供委託の場合は,役務が提供される期日又は期間)
⑤ 受託事業者の給付を受領する場所
⑥ 受託事業者の給付の内容について検査をする場合は、その検査を完了する期日
⑦ 代金の額(具体的な金額を記載する必要があるが,算定方法による記載も可)
⑧ 代金の支払期日
⑨ 代金の全部又は一部の支払につき、一括決済方式で支払う場合は、金融機関名、貸付け又は支払を受けることができることとする額及びその期間の始期、委託事業者が代金債権相当額又は代金債務相当額を金融機関へ支払う期日
⑩ 代金の全部又は一部の支払につき、電子記録債権で支払う場合は、電子記録債権の額及び中小受託事業者が代金の支払を受けることができることとする期間の始期、電子記録債権の満期日
⑪ 原材料等を有償支給する場合は、その品名、数量、対価、引渡しの期日、決済期日及び決済方法
⑫ 上記①~⑪の事項のうち、その内容が定められないことについて正当な理由があり記載しない事項(未定事項)がある場合は、当該未定事項の内容が定められない理由、当該未定事項の内容を定めることとなる予定期日

以上の点が発注書に記載すべき事項です。
一般的な取引に使用する発注書の内容と大きな違いはありませんが、便宜上クライアント企業様が資材部などを経由して発注を行う際は注意が必要です。
例えば多くの企業様の資材部が発行する注文書は、あくまで資材・物品を注文するための書式であり、上記のような「役務提供を伴う情報成果物(映像制作等)」の発注には適当とは言えません。物品など資材注文が前提の書式はコンプライアンス的な問題が発生する可能性もあります。お客様のご都合で既存の書式の発注書・契約書を使用したい場合などは必ず契約前にその書式について弊社にご相談ください。

また、映像等制作物の契約では著作権の譲渡手続きがつきものです。映像等の制作は下請法における「役務提供」である以上に著作権法上の「創作」ですので、著作権にも配慮が望まれます。この点につきましては著作権についての解説でご説明いたしておりますのでご一読をいただければと思います。
>>制作した映像の著作権について

なお、書面についてご不安があれば、弊社でも書面のひな形をご用意いたしておりますので、ぜひご相談ください。

支払期日について(第3条)

取適法の第3条には、以下のように記載されています。

第3条 製造委託等代金の支払期日は、委託事業者が中小受託事業者の給付の内容について検査をするかどうかを問わず、委託事業者が中小受託事業者の給付を受領した日から起算して、60 日の期間内において、かつ、できる限り短い期間内において、定められなければならない。
2 製造委託等代金の支払期日が定められなかったときは委託事業者が中小受託事業者の給付を受領した日が、前項の規定に違反して製造委託等代金の支払期日が定められたときは委託事業者が中小受託事業者の給付を受領した日から起算して 60 日を経過した日の前日が、それぞれ製造委託等代金の支払期日と定められたものとみなす。

いわゆる支払期日とその方法についてですが、納品から起算して60日以内にお支払いただければ法的には問題がありません。ただしご注意いただきたいのは「給付の内容について検査するかどうかを問わず」という記載があることです。
弊社ではお客様がしっかりと内容を精査して修正指示を出せるように、法的な権利とは別に弊社の考え方として最大15日間の検収期間を設定しています。つまり、検収(納品チェック)を早めに行っていただく姿勢がある限り、弊社は実際に納品物を納めてから15日間は「本納品」として扱わず待機するという自社ルールです。
取適法の存在があるため、通常の検収期間は7日間から10日間程度が多いのですが、この短期間ではお客様が相当良心的に検収を早めに行ってくださる必要があります。状況によっては、いくら急いでも仮納品されてきた動画をお客様が検収を行い弊社に修正依頼を出すまでに二週間はかかる場合もあるでしょうし、せめて検収期間に15日間の余裕があればお客様も助かるだろうという意図で、弊社に定着している方法です。
なお、弊社はお客様からのオーダー内容通りに成果物が完成していない場合は自主的に修正を行っております。(※1)

書類の作成・保存義務について(第7条)

お客様は、映像等を弊社に発注して制作し、その対価を支払ったということがわかる書面を記録として保存する必要があります。お客様の会社でも当然記録として書面を作成しておられるでしょうが、映像等の制作を委託するのが初めての場合、困惑される場合もあることでしょう。
その場合は弊社にご相談ください。取適法や著作権法に則った書式の書面を弊社でもご用意いたしておりますので、そちらを二年間保管いただければと思います。

支払の遅延の場合について(第6条)

先にもご説明しました通り、納品から60日以内の支払義務がありますが、60日以内のお支払ができなかった場合のために、取適法には以下のように定められております。

第6条 委託事業者は、製造委託等代金の支払期日までに製造委託等代金を支払わなかつたときは、中小受託事業者に対し、中小受託事業者の給付を受領した日から起算して 60 日を経過した日から支払をする日までの期間について、その日数に応じ、当該未払金額に公正取引委員会規則で定める率を乗じて得た金額を遅延利息として支払わなければならない

上記の「公正取引委員会規則で定める率」とは、年利14.6%となっています。
以上、お客様が映像等の制作を発注される場合に知っておいて損はない、取適法における委託事業者(親事業者)の禁止事項の基礎です。ただし、これらの手続きについては暫時弊社からご案内させていただきますし、書式も整っておりますので、お困りの際はご相談いただければ弊社からご案内申し上げます。

親事業者の11の禁止事項

上記4つの義務以外にも、親事業者には以下の11の行為が禁じられています。まだまだ映像業界や出版業界においても下請法が浸透していないと思われることもありますので、ぜひこの機会にご一読いただければと思います。
なおご一読いただければわかることですが、これらの禁止事項は誠実なお取引をいただいているお客様にとっては何ら障壁となるものではありません。ごく当たり前の商道徳を成文化しているに過ぎないと言っても良いと思います。

親事業者の11の禁止事項

禁止事項 概要
受領拒否の禁止(第5条第1項第1号) 委託事業者が中小受託事業者に対して委託した給付の目的物について、委託事業者は、中小受託事業者の責めに帰すべき理由がないのに受領を拒むと本法違反となる。
代金の支払遅延の禁止(第5条第1項第2号) 60日以内の定められた期日までに代金を支払う義務があり、支払が遅れる場合は中小受託事業者の承諾を得たうえで「いつまでに支払うか」と「遅延利子14.6%分の金額」を明記書面を作成する必要がある。
代金の減額の禁止(第5条第1項第3号) 値引きや協賛金、歩引きなど発注時に定められた金額から一定額を減額してはならない。
返品の禁止(第5条第1項第4号) 中小受託事業者の責めに帰すべき理由がないのに、中小受託事業者から納入された物品等、又は情報成果物を受領した後に、中小受託事業者に当該物品等又は情報成果物を返品すると本法違反となる。
買いたたきの禁止(第5条第1項第5号) 発注に際して代金の額を決定する際に、発注した内容と同種又は類似の内容の給付に対し通常支払われる対価に比べて著しく低い額を不当に定めると本法違反となる。
購入・利用強制の禁止(第5条第1項第6号) 委託事業者は、中小受託事業者の給付の内容の均一性を維持するためなどの正当な理由がないのに、委託事業者の指定する物の購入又は役務の利用を強制することにより、中小受託事業者にその対価を負担させると本法違反となる。
報復措置の禁止(第5条第1項第7号) 委託事業者は、中小受託事業者が委託事業者の本法違反行為を公正取引委員会、中小企業庁又は製造委託等に関する取引に係る事業を所管する主務大臣に知らせたことを理由として、その中小受託事業者に対して取引数量を減じたり、取引を停止したり、その他不利益な取扱いをすると本法違反となる。
有償支給原材料等の対価の早期決済の禁止(第5条第2項第1号) 委託事業者は、中小受託事業者の給付に必要な半製品、部品、附属品又は原材料を有償で自己から購入させた場合に、中小受託事業者の責めに帰すべき理由がないのに、この有償支給原材料等を用いる給付に対する代金の支払期日より早い時期に、当該原材料等の全部又は一部の対価を中小受託事業者に支払わせたり代金から控除したりすることにより、中小受託事業者の利益を不当に害すると本法違反となる。
不当な経済上の利益の提供要請の禁止(第5条第2項第2号) 委託事業者は、中小受託事業者に対して、自己のために金銭、役務その他の経済上の利益を提供させることにより、中小受託事業者の利益を不当に害すると本法違反となる。
不当な給付内容の変更及び不当なやり直しの禁止(第5条第2項第3号) 委託事業者は、中小受託事業者の責めに帰すべき理由がないのに、中小受託事業者の給付の受領前にその内容を変更させ、又は中小受託事業者の給付を受領した後に給付のやり直しをさせることにより、中小受託事業者の利益を不当に害すると本法違反となる。
協議に応じない一方的な代金決定の禁止(第5条第2項第4号) 委託事業者は、中小受託事業者の給付に関する費用の変動その他の事情が生じた場合において、中小受託事業者が代金の額に関する協議を求めたにもかかわらず、当該協議に応じず、又は当該協議において中小受託事業者の求めた事項について必要な説明若しくは情報の提供をせず、一方的に製造委託等代金の額を決定することにより、中小受託事業者の利益を不当に害すると本法違反となる。

 

映像業界で特に注意すべき禁止事項について以下に触れてみたいと思います。

受領拒否や不当返品について

5条1項の1号と4号の不当返品は映像業界で特に気を付けるべきことです。例えば映像制作会社である委託事業者がCGを外部の受託事業者に発注した場合で、そのCGがプレビューでの判断などにより不要になってしまったなどの場合です。
このようにプレビューで不要になった場合でも「編集でカットされ使わなかったから」という理由で、制作委託したCGの納品を拒否することはできず、費用を発注主である委託事業者が負担する義務があります。
法改正前(取適法がまだ下請法であった時代)ですが、以前、数回こういった不当な受領拒否があり、弊社では法に則り公正取引委員会に報告を行いました。

割引困難な手形の交付

出版業界などでまだあるのですが、60日を超える長期手形による支払は基本的に避けた方が無難です。平成28年12月14日に「下請代金支払遅延等防止法に関する運用基準」の見直しが行われましたが、これまでは「割引困難な手形」の定義は繊維業が90日、それ以外の業種は120日以内となっていましたが、あまりに当然のように90日の手形取引を行う会社があるため、現在では「60日以内」に短縮するよう指針が見直されています。
今も90日の手形で支払いを行っている会社はご注意ください。

不当な給付内容の変更・やり直し(第5条第2項第3号)

特にテレビ番組の現場のように、プレビューの度に内容がひっくり返るような場合、気を付けておかねばならないのが、以下の項目です。
下請事業者に責任がないのに、費用を負担せずに発注取り消しや内容の変更、やり直しを行わせることは禁止されています。もし、正当な理由で取り消しや内容の変更を行う場合は、その内容を記載し、下請事業者の承諾を得た状態で必要書類を保存する必要があります。

取適法第5条2項より抜粋

第5条第2項
委託事業者は、中小受託事業者に対し製造委託等をした場合は、次に掲げる行為(役務提供委託又は特定運送委託をした場合にあつては、第1号に掲げる行為を除く。)をすることによって、中小受託事業者の利益を不当に害してはならない。

三  中小受託事業者の責めに帰すべき理由がないのに、中小受託事業者の給付の内容を変更させ、又は中小受託事業者の給付を受領した後
(役務提供委託又は特定運送委託の場合にあつては、中小受託事業者からその委託に係る役務の提供を受けた後)に給付をやり直させること。

委託事業者が受託事業者に責任がないのに,発注の取消若しくは発注内容の変更を行い,又は受領後にやり直しをさせることにより、受託事業者の利益を不当に害すると違反となります。
例えば、サブ出しVTRを制作中、CGを発注して編集ではめ込んだが、プロデューサープレビューでCGの内容を変更する必要性が出た時に、無償で内容変更を指示するような場合がこのケースです。

当たり前の商道徳なのですが、まだまだ取適法(旧・下請法)が映像制作の現場に浸透しておらず、知らず知らずのうちに違反しているケースが後を絶ちません。気を付けたいものです。

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グロス発注は禁止

上記でご説明した「不当な給付内容の変更・やり直し(第5条第2項第3号)」から導き出される結論として、グロス発注は違法となります。グロス発注とは、「プロデューサーがOKを出すまで●●万円でやってくれ」「プレビューで変更が出る可能性があるが、それも含めて●●万円でお願いしたい」というオーダーの仕方です。「OKが出るまで」ということは内容変更が前提であるにも関わらず、料金は一定ということですので、そもそも工数分の料金を支払う姿勢が見えません。

このグロス発注は長年下請け業者を苦しめてきました。何度言われた通りのものを作っても「プロデューサーの指示で内容が変わった」と言われてしまい、何度改編しても、その改編のための料金は一切支払われないという事態が発生するからです。

受託事業者である映像制作会社やCG制作会社は最初にオーダーいただいた通りに成果物を作り、納品しているのですから、委託事業者は、その納品済の成果物を制作した費用を支払う義務がありますし、作り直す費用も負担する義務があるのです。

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取適法に違反した場合

取適法に違反した場合、公正取引委員会の判断で悪質と判断された場合は以下のサイトに違反内容が公開されます。違反した会社が年度ごとに公開されていますので、参考までにご覧いただければと思います。

>>公正取引委員会下請法勧告一覧
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※1…これは弊社側の瑕疵が認められる場合に限ります。お客様都合によるご発注の内容変更の場合は取適法第5条第2項第3号に則り、有償対応とさせていただきます。あらかじめご了承ください。

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