3D-CG制作レタッチ工程
CGはレンダリングした後の状態では、「いかにもCG」という感じで映像として成立していないことがほとんどです。その原因は光の加減であったり、質感のテカリであったりしますが、これら質感や光の状態を映像作品の狙いに合わせて調整する作業をレタッチと呼んでいます。
また、影や空気感を後から足したり、合成したり等の作業もレタッチですし、静止画のCGカットを動画のCGと合成して完成形に仕上げるような「パーツの組み立て作業」もレタッチの一部です。
つまり一言で言えばレタッチは「最終仕上げ作業」全般を指しています。
例えば下記の二つの画像を見てください。これら二つは元々同じクルマのモデルですが、特にZの部分を見るとお分かりいただけるように、レタッチの方法によって、写真のようにもマンガのようにもできるのです。自由度は広く、モデリングさえ終わっていれば、どのような作風にでも仕上げることが可能です。
合成作業もレタッチの一部
三次元CGはモデリングしたデータをレンダリングしただけでは完成とはいえません。ほとんどの場合、一般的に皆さんが目にするCG動画は、複数のCG動画をレイヤー(層)として数枚合成し、一枚の画として仕上げたもので、単一のモデルのみでCG動画が成り立つことは稀です。
例えば下の写真を見ていただけるとイメージできると思いますが、髪の毛とブラシ、そして背景にある後頭部はまったく別々のCG素材です。そしてこれらを一つの画にまとめ上げ、より精度の高い映像として仕上げる作業。これがレタッチと呼ばれる作業です。
三次元CGソフト+AfterEffects
CGのレタッチはほとんどの場合、AfterEffectsというソフトウェアで行います。写真加工ソフトのように色を調整したり、切り抜きや変形をしたり、きれいにレイヤーを重ねあわせたりといったことを可能にします。上記写真もこのAfterEffectsのインターフェースです。
上記の映像は、髪の毛をブラシでとかすと毛がまっすぐになるというCGですが、CGでまっすぐな髪の毛を作成しておいて、ブラシでとかす前の縮れた髪の毛の状態はAfterEffectsで作成したものです。この方法のほうが縮れの状況がきれいに描けたため、あえてCGでは縮れを表現せず、その表現はAfterEffectsに任せてしまったわけです。
このように、レタッチ段階でどのような加工をするかを考えておき、そこから逆算して三次元CGで素材を作成します。そしてこのレタッチこそCGカットの完成度を大きく左右する工程であることがおわかりいただけるものと思います。
レタッチをポスプロに任せるか否か?
編集スタジオのことをポストプロダクション(ポスプロ)と言います。一般的に私たちが制作したCGカットは、編集スタジオでの作業を経て作品の一部分として組み込まれますが、では、どこからどこまでをCG制作会社である私たちが行い、どこからの作業をポスプロにお任せするか?という「手順の区切り」を考える必要があります。
もちろんポスプロにおいてもAfterEffectsは日常的に扱うソフトですので、CGレタッチ作業の一部、または全部をポスプロで行うことも可能でしょう。しかし、CGの制作は完成形をイメージしながらCGクリエイターがレイヤーの分け方を計算しているため、そのレイヤー分けの意図がわからないとレタッチも難しいと思います。そこで高度に合成を行った動画カットの納品は、レタッチを経て一本化した動画と各レイヤーをバラバラにした素材の両方を編集所に納品するようにいたしております。
CG制作の費用について
CGは当サイトでご紹介している通り、複雑な段階を経て作られます。コンピュータを道具として使うというだけで、実際には粘土細工のように手作業の世界ですので費用もかさむという欠点があります。もしCADなどの形状データがあったとしても、それをそのまま使えるわけではなく、改編してCGの素材として適当な形にクリーニングをしなければなりませんので、結局は手間のかかる作業であることに変わりはありません。
費用については「モデリング」「レンダリング」そして当ページでご紹介している「レタッチ」の三つの項目にかかる費用の合計で見積りますが、詳細はCG制作の費用のページをご覧ください。