要点のみを残し不要なものを削除する
そもそも、3D-CGは「形を作ること」(モデリング)にコストがかかる性質があるので、不要なものをモデリングすることを無意識のうちに避けるという極めて優れた特性があります。実はこれこそが3D-CGの大きな利点です。
3D-CGは本来、積極的に作られるものではありません。まず第一に尺に対して大きなコストがかかるというデメリットがありますので、「CGでなければ表現し難い」という場面で使われるものです。そのため、コストを絞るためにも極力「不要な部分は作らずに必要な要素のみをモデリングする」という点において制作者および費用を負担するクライアントの意向が一致します。そして、その結果として「シンプル・イズ・ベスト」を体現したカットが出来上がります。
シンプルであることは映像にとって大変重要です。要点のみを残し、余計な情報(デモノハレモノ)を省くことで、見やすい映像になるため、よりテーマとなっている重要な情報が伝わりやすくなります。
抽象化でリアリティを排除できる
象徴的なものを抽出するのが抽象化です。つまり抽象化とは「余計なデモノハレモノを省き、シンボリックな部分のみ残す」ということでもあります。こうした抽象化が活きてくるのは、何もデザインの世界に限ったことではありません。
例えば医学映像。手術の術式を描く際、本物の手術の様子を撮影して編集することも可能ですが、医師同士での視聴ならともかく、この実写動画を患者さんに見せるというのは抵抗があります。
しかも、実写で手術を見せた場合に問題になるのは「術野が見えにくい」ということです。これは上でもお話した「デモノハレモノ」が多いということです。血液や器具によって術野が見えにくく、重要な情報が伝わりにくくなります。しかも血液など印象が強いものに視聴者の目線が誘導されてしまうため、要点が伝わることはほぼ期待できないでしょう。
そこで登場するのがCGです。CGなら血液が写り込むことも、器具が視野を遮ることもありません。しかも臓器をシンプルな質感で描くことで生々しさを排除して、必要な情報のみを的確に伝える事ができます。これこそがCGが持つ「抽象性」の強みです。