映像制作の現場からタイトル
2023/4/1公開

映像はプロ専有物ではなく皆さんのもの

私の場合、ひとりの映像屋個人としては、同じように映像制作を楽しむ人が増えてくれることは大いに歓迎です。最近は撮影に使うカメラもずいぶん安価で高性能なものが出てきましたし、一眼レフカメラの動画など、なかなかキレイです。それに編集ソフトも様々な種類がありますので自分に合ったものを探すこともできる時代です。大変良いことだと思います。
自分の会社をPRするために動画をYouTubeで流すとか、自社のウェブサイトに貼りつける動画を作るとかであれば、どんどんご自分でお作りになれば良いと思いますし、むしろやるべきだと思います。
映像はもはや私たちプロだけのものではありません。皆さんのものです。

問題は???映像業界に近いが映像の専門ではない中途半端な門外漢!!!

ところが、今問題となっているのは、そうした自社が使う動画というケースではなく、経験も無い映像業界の門外漢の方々がクライアントから動画の案件を請けているということです。
小さなプランニング会社さんや広告屋さん、そして出版社や編集プロダクションが、たまたまクライアント様から映像の相談を受けることはあるでしょう。しかしそうした映像業界の門外漢が無理やり自分たちで映像を手掛けようとして、台本など途中まで作って撮影なども行ってみたは良いが、実際にモノにならず結局は私たちのように映像を専業とする会社に助けを求めるというケースが大変増えているのです。
もし自分でやりたいという事でしたら、ちゃんと責任を持って最後まで自分でやってほしいのです。途中の中途半端なタイミングで私らプロを巻き込まないでほしい。

素人が食い散らかした案件はお断り

そして結論から申し上げますと、途中まで素人さんが食い散らかした案件を私たちプロが途中からお引き受けすることは絶対にありません。途中までやったのなら、最後まで責任を持ってやり終えてもらえたらと思います。というのも、素人さんが途中まで食い散らかした状態の作品を途中から受け取って軌道修正し、マトモな映像にするなんてことは、不可能ではないにせよ大変な労力を要する仕事になりますので、コストは絶対に見合いません。もし私たち映像のプロに頼みたいなら、「できない人」は引っ込んで、ちゃんとプロに最初から最後まで任せるべきなのです。
その理由をわかりやすく順を追って説明しましょう。

映像にはお作法が存在します

まず、プロの映像の世界には独自のお作法が存在します。映像というのは多くのスタッフが集まって作りますので、一定のフォーマットのようなものを統一したルールとして共有していないことには動きがバラバラになってしまい身動きが取れなくなってしまうのです。逆に言えばこうしたプロのお作法があるから各セクションのプロのスタッフが自分の権限の中で最大限に能力を発揮し、プロの仕上がりが約束されるという事情があります。
映像の仕事に新卒で入るといろいろな勉強をしながら仕事に従事しますが、新人が一番学ぶべきはこのお作法であり、お作法を覚えてくれない限り第一線で仕事を担うことは不可能です。
映像はチームで制作するものですから、チームとして動くための最低限度のお約束があります。ですから、お約束やお作法を知らない映像業界の門外漢がトップに立って現場を指揮し、プロのディレクターやカメラマン、VE、音声マン、編集マン、ミキサー、ナレーターを使うということは考えられませんし、まったく不可能と断言します。

とはいえ先ほどから登場する「映像業界の門外漢」は、「自分が知るべきことを知らないという事実を知らない」のです。つまり自分の無知を知らない。大抵は広告、出版などの業界か、WEB業界などちょっと映像制作と近いクリエイティブワークの会社の人ですから日本語は書けるので、「台本くらいは自分で書ける!!」と思ってしまうようです。
しかしやってみるとそう簡単ではありません。映像の台本というのは映像作品の設計図ですから、ナレーションや現場で収録したインタビューなどの音と、そこに載せる映像・動画とが混然一体となり役割分担をした状態を台本上で構築しておかねばなりません。ですから、門外漢の方が台本を書いたつもりでロケをやってみると、ロケの最中に色々な矛盾を体験することになります。準備万端整えてロケに臨んだつもりが、まるでどうにもならない。仕上がる気がしなくなる。そういう事態に陥っているのです。
もともと台本だけでも「構成作家」という職業が成り立つくらいですから、プロがやるべき仕事です。もともと書くことが好き、もしくはそこに才能があり、なおかつ映像を専門に数年間でも修行した人しか台本を構成して書くことはできません。
しかし自分の無知を知らない人は、お客様からお金をもらって「これで映像業界に進出できるかも」という淡い期待を持って間違いを冒すわけです。しかもそれが一人や二人なら良いのですが、大量にとなると、こうやってブログで啓蒙を行う必要性に迫られます。

ひん曲がった設計図で正しく家が建つか?

例えば、そういう映像業界の門外漢、広告マンや書籍ライターの方々から「台本は書いたのだけど、演出以降、編集やMAを含めてお願いできませんか」というご相談をいただくことが近頃増えました。で、一応台本とやらを見せてもらうと、まったく台本になっていない。
音声と映像の割り振りがまず出来ていないし、耳で聞いて分かる、画で見て分かるという映像・動画の基本を意識していると思えない「単なる事実を積み重ねただけの作文」になっていることが多いです。これを基に映像化しようとしても、まず絶対に作品になりません。
こういう場合、「これは台本とは言いません、作文です」と説明するのですが、「この台本を基に、あなたに演出から先をお願いしたいんです」と引き下がらない。途中からの「いじくり倒し」で何とかかんとか映像として成立するレベルにしたいという意味なのでしょうが、そもそも作品の設計図たる台本が素人仕事で滅茶苦茶になっているのだから、やりようがありません。再構築するにもロケを数回やった後だった場合、私にはどうすることもできません。
つまるところこうした手合いは、生兵法でお客さんから映像案件を引き受けたは良いが、結局どうやっていいかわからず、途中から私らプロに丸投げしようという魂胆が見え見え。そんなもんハッキリ言えば迷惑だし、そんな電話でいちいち貴重な時間を無駄にしたくない。俺たちに仕事をさせたいなら最初から私たちの手順に従ってちゃんと仕事をさせてほしい。

作文は日本語文法、台本は映像文法で書かれている

そもそも素人が書いた「台本でもなんでもない単なる作文」を基にして映像なんか作れるわけない。作文と台本の大きな違いは文法です。つまり根本的問題。作文は作文単体で成立していなければなりませんから日本語の文章として成立するように並べてあります。しかし台本は映像の流れ(映像文法)に沿って書かれている。日本語で書かれてはいますが、それは「画」を日本語にしているだけであって、日本語の文章を書いているわけじゃないんです。台本は「画」の流れを柱にしながら音であるナレーションは付随する程度のもの。画を第一に考えて組み立てられている。だから作文を基にして画を組み立てようにも、そもそも作文は日本語として読みやすく書かれていたとしても画の情報がまるで無いので、抽象的すぎて画を当てられなかったり、画にすると順序がまるでおかしなことになったりする。映像の台本はモンタージュ理論に則り画の並びでストーリーを展開しているんです。だから映像作品の設計図として成立する。

しかしそうなっていない単なる作文でクライアント企業にすでに了承をもらうという事そのものが、もうすでに映像として破綻しているのです。
知識も経験も無いから成立しないことすら気が付かず、その作文をクライアント企業に見せて内容に了解を得たが、台本になっていないから撮影しようにも、その作文の中の一文を画で表現するにも何を撮ったら良いか想定できず、編集しようにも画が当てられず、思った通りにならないことに後で気が付き、その軌道修正を私らプロに何とかしてほしいというのが本音でしょう。
つまり、映像作品の設計図である「台本」がひん曲がってるから映像にならないという状態なわけです。本当にこういう事例が後を絶たないのです。

映像屋で食っていける人は100人に1人

要するに自分がコピーライターや記事を書いてきたから台本も書けると思っているのでしょうね。でもね、何回も同じことを私はずっと言ってきたが、作文と台本は違うもの。まったくの別物。日本語の文章が書けるから台本が書けるかというと全然違うし勘違いも良いところ。
プロの世界の映像の台本というのは、その台本の段階でどういう画をどう撮影したり作ったりして当てるか?というところまで計算され尽くしている。もっと言えば効果音やテロップの想定まで台本ですでに固まっていることが多い。そして適度な自由度を持たせて現場で良い画がたまたま撮影できた場合や、良いコメントが偶然撮れた場合にも、それらを足せるようにうまく工夫されている。つまりガチガチに固めているようで、実は自由度も適度に残し、現場の良いハプニングも利用できるようになっている。だから予定調和にもならないし、台本をむしろ超えた作りを実現することができる。
こういう台本を書けるようになるまでに、専門の構成作家というスタッフは最低10年は修行を積んで一人前の台本書きとして認められ仕事を任されているわけです。適当に作文を書いてるのとはワケが違うんですよ。

やりたいなら正攻法で10年修行してほしい

本音を言えば本当にこういう中途半端な連中は不愉快。映像作家という商売を軽く見ているし安易だし、もっと言えば傲慢だ。本気で映像を仕事にしたいなら、私らの会社に弟子入りして10年修行しろと思う。でも才能がある、食えるようになる確信があるから育ててやりたいと感じさせてくれる金の卵なんてもんは、せいぜい100人に1人。
手間とカネをかけて本気で弟子を育てるならちゃんと俺が自分から選んで頭下げて「あんたはすごい才能があるから絶対食えるので俺のところで勉強しないか?生活は保証する」とお願いしますよ。これまでの人生で、それをやったのは私は一回だけです。そしてその弟子はもう映像制作会社の社長していますよ。

>>映像制作の現場からTOP

映像演出の専門家が作るコンテンツの数々

映像作品の事例紹介

高度な演出技法を惜しみなく投入したデキサの映像作品群

弊社映像制作会社デキサは映像演出を専門とするディレクター職の代表が設立した映像制作プロダクションです。コーポレートアイデンティティ動画や、商品PRといったマーケティング動画、マニュアル動画まで、それぞれの用途に合わせた演出方針で的確な映像を制作いたします。
30年の経験に裏付けられた確かな演出で、貴社の動画コンテンツをレベルアップさせてみてはいかがでしょう。
以下のリンクのページにはほとんどのジャンルの映像制作の専門ページが紹介されています。皆さまのフィールドに合ったプランが必ずあると思います。ぜひお役立てください。

>>弊社デキサの映像制作の詳細

メールでのお問合せロゴ