2023/4/5公開
映像作品にとって大切な三要素
久しぶりにディレクターの立場から少し小ネタをご紹介します。
先日、中外製薬様の映像作品を作るにあたり参考として久しぶりに「Dr.HOUSE」という海外ドラマを観ていたのですが、よく出来ていますよね。変わり者の診断医を主人公にした医療ドラマですが、ストーリーも映像品質も演技もキャラ設定も、大変良く出来ている。
CG映像の参考に観るだけのつもりが、ついつい観てしまう。そんな作品です。
映像作品の品質を表す三要素として、昔の映像屋は「スジ・ヌケ・ドウサ」という三つを挙げていましたが、このドラマは上記三要素がすべてそろってる。
じゃあ「スジ・ヌケ・ドウサ」って何よ?って話になるわけですが、こんな言葉を口にする映像屋も今はもういなくなってしまったようで、ネットでも情報がほぼありません。
とはいえ映像を作る上でとても大切な考え方ですから、ここで少し紹介しましょう。
スジとは?
スジというのは「ストーリー構成」のことです。映画なら脚本そのものの流れを指し、テレビのバラエティやドキュメンタリーなら大まかなハコの流れを指します。
バラエティやドキュメンタリーでスジという言葉を使うことに違和感を感じる人がいるかもしれませんが、バラエティもドキュメンタリーも、大まかに狙った構成を先に立てておき、そこに全体の流れがうまく乗るように撮影を行い、編集もそこに準じるようにします。
つまり適当に狙いもなく撮影しているわけではないという点で、バラエティやドキュメンタリーにもスジが存在するということ。
ヌケとは?
ヌケというのは「映像そのもののクオリティ」。狭義で言えば動画の解像度やS/N(ダイナミックレンジ)を指すのですが、広義で言えば音の品質も含まれますし、もっと広く言えば、「演出的に狙ったものが必要十分に撮影され録音されているかどうか」までを含む言葉です。
もう少し最後のカッコの中の言葉を詳しく言いますと、「画質は何のために必要か」という問いへの答えになります。つまり演出的に必要な登場人物の表情や、ストーリー展開を知るための糸口となる背景や伏線がよく写っているかどうか?台詞や言葉がよく聞こえるかどうか?
こうした要素が作品の「わかりやすさ」や「伝わりやすさ」となりますので、映像演出的に大変意味があるということです。
ドウサとは?
そしてドウサというのは脚本に描かれているキャラクターや、それを再現構築して命を吹き込み具体的な動きにする、つまり「演技」のこと。
元をただすと、狭義には「ドウサ」の意味はもともと役者の演技だけだったのでしょうが、キャラクター設定は演技をする役者によって実際の形になりますし、私の考えではキャラクター設定と演技は表裏一体であり、映像作品のクオリティを高めるためにも常に意識しなければならない要素であると思うので、ここでは分かりやすく「キャラや演技」と一つの要素として括りましたことを御了承ください。
お客様もぜひ同じ目線で
上記のように「ストーリー構成・映像品位・キャラや演技」という三つが揃っている映像作品は優れた作品だという意見で、これを覚えやすく「スジ・ヌケ・ドウサ」という言葉にして、常に意識しようという意図で生まれた言葉です。
最近はテレビや映画などのタイムラインベース作品(時間軸に則りストーリー展開するコンテンツを指す私の考案した造語)に限らず、ゲームなどUnityを経て構築されるコマンドベース作品(これはゲームのように視聴者の命令を基に展開するコンテンツを指す造語)も映像作品の中に括られるため、上記の三要素以外にも要素が生じている気もしますが、少なくともテレビや映画など古典的映像コンテンツの世界においては、今も昔も変わらない価値観です。
ぜひ映像作品の制作を発注される際には、ぜひ皆さんも上記のような目線から映像制作に関わってもらえたらと思います。