映像制作の現場からタイトル2023/6/4公開

メディアは本来「民主化」に欠かせない要素

今日は、メディアがどれだけ民主主義にとって大切なものかを話してみたいと思います。日本はすでに民主主義の国ですし、そうした意味では他国の場合と違い、メディア自身も実はあまり「メディアと権力の関係」についてわかってないんじゃないかと思うことがあります。
例えばですが、新型コロナが流行して世界中が滅茶苦茶になっていた時、日本政府は国民に対して強制力を持つ命令を何も出せませんでした。とにかく最初から最後まで「お願いベース」によって対策を講じてきたのです。こうした様子は、どこかの国のように外出禁止令を出したり、強制力がある対策を行ってきた国とは正反対です。そして、こうした日本政府の姿勢に対して、日本のワイドショーなどでは、やれ「もっと国民に強制力を持つ法律を作るべきだ」とか言ってるコメンテーターまで現れる始末。でもこれは本来メディアが言うべきことではない。

メディアはそもそも国民の立場に立ち、権力を監視する役割を果たさなければならないはずです。G7で総理に「逃げるんですか?」発言をした人とか、どっかの左翼活動家みたいな新聞記者のように「何でもかんでも政府に楯突けば良い」というわけではありませんが、冷静な目で権力が行っていることをよく監視し、もし権力が暴走しているとわかったなら、そこを徹底的に調べて国民に知らせるべきなのです。その意味では冤罪事件の可能性を調べ尽すことや、税金の無駄の可能性を見逃さないことは大切なメディアのお仕事と言えると思います。

とはいえ、監視役としてのメディアが、その役割を果たしているかというと、私は疑問を感じています。例えば原子力発電所の危険性に関するアナウンス。今でこそ東京電力福島第一原子力発電所の事故があったから、原子力の危険性については報道されつくしていますが、あの事故があるまで、日本の原子力発電は「安全で安心です」と言われていましたし、メディアもその危険性について触れてきませんでした。

前にもどこかで書いたことがありますが、私が若い時、テレビの暇ネタ特集コーナーとして「原子力発電を知る」という企画を出したことがあります。その時、私はプロデューサーから以下のように言われました。

「テレビ局を潰す気か?」

腐っていますね。腐ってる。腐りきっています。このプロデューサーも腐ってれば、年間数千億円の規模の広告費を使ってメディアの口封じをしてきた大手電力企業も根本的に腐ってる。もっと言えば国の原子力政策そのものが一番悪い。なんでもかんでも権力に楯突けば良いということではありませんが、さすがに国ももう少し考えてほしかった。
国も隠し事をしていたわけですし、さらに言えばメディアも沈黙を貫いた。目くそ鼻くそとはこの事です。何が「明るい未来のエネルギー」だろうか?

チェルノブイリを笑ってた日本

チェルノブイリで事故が起きた時も日本のメディアは「あれは黒鉛減速沸騰軽水圧力管型原子炉だから事故った」って言ってましたよね。いや、もっと正確に言えばそうアナウンスしていたのは日本の原子力発電の専門家でしたが、そこだけを抜き取って報道していたのもまた事実でしょう。はい、もっと念のために言えば、確かに少しは「日本の原子炉も危なくないでしょうか?」くらいは言ってたかもしれないし、ほんのちょっぴり映像として扱ったかもしれない。でも全体的な印象としては日本の原子力政策にダメージを与えない範囲で、もっと見方を変えれば、電力会社様からの「で●子ちゃんCM」を打ち切られない範囲で扱ったに過ぎません。だから、他国で起きたあの悲劇、あの状態を報道で見ても、日本の国民はチェルノブイリをネタにする程度には余裕をかましていられたわけです。

でもですよ、日本も電源喪失しましたよね? 屋根、吹っ飛びましたよね? 水素爆発しましたよね? 世界初の海水注入やベントする羽目になりましたよね? つまり、結論から申し上げるなら

「メディアは国家権力がやってること、大スポンサー様がやっていることに対して、監視なんか全くしてませんでした。」

これが真実。どれだけ無駄なんだろうかね。だからNHKが受信料を上げようとしても私は反対。スポンサー収入減を恐れた民放なら百歩譲って「まあ、メシがかかってるってことですかね」と、私の普段の毒舌も和らぐわけですが、NHKは視聴者からカネを直接取って運営しているわけだから、本来なら何も恐れずに、ただただ視聴者の利益を優先して戦うべきだったのではないでしょうかね。それとも国策で推進されている原子力政策を批判することなどできませんか?だとしたら放送の電波を司ってる総務省と放送局の関係を改めるべきですよね。

テレビも長い歴史の中で、自分の立ち位置をどこにすべきか、ちゃんと見直す時期に来ていると思う。特に民主主義国家におけるメディアというのは、独裁国家のメディアと違い、国民の立場に寄り添い、国家権力を監視するという使命があるはず。国民の皆さんは権力者が一体何をしているのか?それをいちいち自分の目で確かめるほど暇じゃない。だからメディアの連中がいるんだろうし、その役割を果たさないなら不要ってことになってしまう。

政府が強制力を持たないという意味において、日本は世界でも有数の「政府に何の権限も無い国」です。しかし、それは裏を返せば日本という国がまさに「民」が「主」となって成立しているからにほかなりません。つまり日本は世界でも稀に見る自由の国、民主主義の国だと言っても良いと思うのです。
あのアメリカですら、大統領が命令すれば国民に何かを強制することができるのです。しかし日本は皇室も内閣も、国民に対して何かを強制することは不可能です。だから新型コロナの流行時も、国民に対してはお願いベースで対策を講じてきましたし、それがある程度功を奏して今があるのです。これは生真面目な日本人の性格的な面も良い方向に働いているのでしょうが、日本の良いところとして認識したほうが良いようにも思っています。

ところがワイドショーのコメンテーターが「政府が国民に強制できるように」なんて真逆のことを言ってるのは日本くらいなもんでしょう。どこの国のメディアだって、権力が強化されることに対しては神経質になるものです。

民主主義を求めた中国の若者たち

そういえば今日であの天安門での出来事から34年。あっという間でしたね。当時私は大学生で、この事件は本当に衝撃的でした。
あの国の共産党一党独裁に逆らい民主主義を求めている人がいて、命をかけている。あの有名なタンクマン(戦車の前に立ちはだかった人)の映像を見ても、戦車の乗組員である軍人も市民を殺したくないから何とか避けて通ろうとしているわけです。
とはいえこの戦車の乗組員は一般市民をよけて通ろうとしていただけまだマトモで、一方では市民に銃を向けるという軍としてはあるまじき恥ずべき行動に出て市民に犠牲者も出ています。そこに集まった人たちは普通の人でした。そして彼らは自由を求めただけ。

そもそも「人民解放軍」が「人民を抑圧」してどうするんだ?矛盾を感じないのだろうか?人民をちゃんと解放しろって。

こういう姿勢だから、私は中国が究極的には民主主義陣営を超えることは無いだろうと断言しているのです。
中国は確かに金持ちにはなるかもしれない。しかしカネで魂が買えないのは世界万国共通、いや、宇宙の真理なので、共産党が人権無視で独裁政治をやっているうちは世界から尊敬されることもなく「世界のカネづる」に過ぎない。さらに言えば国民がどんなに経済的に成功したとしても、自分の国に誇りが持てるか?という問題はどうしても残る。結局カネがあっても世界から尊敬されるわけじゃないのは日本が過去の湾岸危機の際に学んだ通りです。

中国は日本の後を30年遅れで追いかけている

そもそも、中国が今以上の発展を見せるのかどうか?ここにも疑問があります。歴史は繰り返すものですので、日本の成長と衰退をよく思い起こすと中国の将来を占う上で大変参考になります。
よく中国の経済発展の様子や、これまでの流れを見てみると、中国という国は日本の30年遅れで歩んできました。高度経済成長で台頭したのも30年遅れ、世界の工場として政治的イデオロギーに関わらず様々な国のメーカーの製造を引き受けたのも30年遅れ。そして去年だったかな、中国の人口がいよいよ減りはじめた。つまり成長を支える土台を失っている。不動産バブルの崩壊もありましたよね。
ちょうど30年ほど昔、日本ではバブル崩壊が起きましたね。そして空白の30年を迎えるわけです。中国もいよいよそういう限界のようなもの、壁に当たっているように思われてなりません。

それでも、まだ中国の場合は共産党が正しい判断をしていれば、成長の可能性はあったのです。日本の場合は総量規制という大愚策があって成長が止まったが、中国あたりは不動産バブル崩壊のようなものだけで、日本の総量規制ほどアホなことは起きてないので、例えば民主主義陣営の考えにある程度理解を示し、折り合いをつけてくれていたら、これまで太平洋を既得権として握ってきたアメリカ、日本、オーストラリアといった大国も、多少の事は大目に見ていたはずです。それは中国の人口が多く、消費者がたくさんいるから市場として大変魅力を持っているからです。民主主義陣営の誰も中国のような魅力的な市場とケンカなどしたくないのです。生かさず殺さず、市場を開放してくれていたら、それが一番幸せなのです。

しかし今の中国は海軍力を強くして、南シナ海を軍事基地にしたわけです。で、フィリピンやベトナムと摩擦を起こした。台湾にも恫喝を行い、日本の尖閣諸島にちょっかいを出している。これではさすがに友好的とは言えない状況だと思います。
先日は南シナ海を飛んでいたアメリカの哨戒機の前を中国軍の戦闘機が横切ってニアミスになっていましたし、その後も台湾近海を航行中のアメリカの軍艦の前方140メートルを中国海軍の軍艦が横切るという挑発行為が発生しています。これらは本当に危険なので、本気でやめてほしい。
これで果たして政府からの抑制は効いているのでしょうか?中央政府からのコントロールが効いているなら、軍がこのような挑発に出ることは無いはずです。もっと言えば、もしこれを中央政府が指示していたとしたらどうかしている。下手をしたら航空機や軍艦が事故を起こし、それが火種となり一触即発の事態になりかねない。

これじゃ自由主義陣営が中国と話し合う意味すら薄れてきている。当然自由主義陣営もクアッドなどの枠組みによる強大な抑止力をもって中国の太平洋進出を阻もうとします。つまり強権的すぎるがゆえに、中国は今以上に国内を発展させるだけの資源が得られないという事態になっているのです。

メディアはどうなっているか

そもそも独裁国家が崩壊した事例は歴史を見れば数多く、例えば1970年台の中南米のように大抵はメディアからの情報によって民衆が現実に気づいて蜂起を起こすというシナリオが多い気がします。また、つい最近ですとアラブの春も、インターネットによる情報化が一般民衆を蜂起させるきっかけとなっています。つまるところ独裁者がメディアを握って抑制できているうちは国民も真実を知る事はありませんが、抑制ができなくなり真実を国民が知るようになると、不満が高まり革命のような事態が発生するわけです。
だから、ナチスドイツはラジオなどのメディアを徹底的に握った上で映画などの活用を活発化させて自分たちの行動を正当化していましたし、北朝鮮はインターネット回線へのアクセスを制限して国民が不満をなるべく抱かないように注意を払っています。勿論今の中国共産党もメディアに圧力をかけて天安門事件についての真実を隠そうとしています。しかし世界は天安門事件を忘れることなどありません。もし民主主義を求めている中国人がいるなら、私たち日本人は味方です。

中國人民,請在天安門事件中獲得你們真正想要的自由主義。

私らの世代というのは、若いころに、どんどん伸びてくる中国を見て、中国こそ日本のパートナーと思っていた世代です。大学の第二外国語で中国語を学んでいたのも、いずれ中国こそが日本の友人になると思っていたからです。しかし台湾を脅すし、フィリピン、ベトナムにも失礼をやらかしています。これではもう関係改善は難しい。

警告もせねば

私は今はアメリカも自分らのテリトリーを冒されなければ黙って中国にはお客さんとして商品を買ってもらうと思います。しかし国益が脅かされるとなれば強力な軍事力を背景に外交を展開してくるのは確かです。あまりアメリカをみくびらないで。いざとなったら日本に原爆を落とした国です。軍事力は今でも破格の強さで、まず中国あたりの軍が逆立ちをしたところでかなう相手ではありません。
本当にアメリカは恐ろしい国ですよ。中国は政府も国民も少しアメリカを怖がったほうが良い。

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