映像制作の現場からタイトル
2020/12/31公開

増加している安全教育動画の制作

年末になりましたね。今年も本当にありがとうございました。コロナウイルスの蔓延で大変な一年でしたが、来年はまた緊急事態宣言が出される可能性もあり、油断できない一年になりそうですね。来年もよろしくお願いします。では本題に入ります。

弊社の制作実績の中で最近増えてきたのが、工場や作業現場における事故事例の紹介動画です。こういった動画は会社の中で安全教育に使うために作られているのですが、昔は再現ドラマを撮影して制作されていたジャンルです。しかし近年ではCGを使ったシンプルな描き方が好まれるようで、私たちのようにCGも映像制作も自社で行っているような会社にとっては「ジャスト」な仕事となっています。

事件事故再現CG制作の実例

アンリアルなCGの質感が、事故などのショッキングな生々しさを緩和してくれる

CGを活用した安全教育動画のメリット

こうした安全教育をCGで行うメリットはたくさんあると思います。特に「生々しさを排除できる」というメリットは計り知れません。
一般的に、安全教育動画にとって欠かせないのが実際の事故事例です。しかし事故の瞬間というのは誰もがあまり見たいと思う映像ではありませんので、こうした映像は何らかの方法でオブラートに包む必要がありますし、結果としてそのほうが見てもらえるので訴求効果も高くなる傾向があります。(放送業界では視聴率などエビデンス多数)

テレビ番組などでは事件や事故などの映像はあまり生々しいと視聴率に悪影響が出ることが多く、経験則的にもスタッフの間では昔から言われていたことですので、可能な限り再現CGなどを活用する方向で制作されることが多く、弊社もCG制作において在京のキー局すべてに参入している関係から、こうした事件事故再現CGの実績が多数あります。つまり映像においては「生々しくて怖い映像」は「視聴者の脳裏に恐怖を植え付ける」のではなく「視聴者が目を背けてしまう」という結果になるということです。

こうした事情があり、最近では再現ドラマのようにリアルに「痛がる」「うめき声をあげる」ような表現は好まれず、どちらかというとドライなCGで事件や事故の現象のみを描くのが主流となっています。

東京電力さんのCG動画制作事例

最近ですと、東京電力さんの事故事例CG動画を作らせていただきました。この作品もフルCGで制作ということで、実はこの仕事、他のCG業者さんが当初やっていた仕事なのですが、様々な事情があったようで(と、少し遠慮がちに書いておきます)途中で弊社に制作会社が変わったという経緯。ということで弊社に案件のご相談のメールをいただいたのが3月11日で、納品が3月末という「超」が付く突貫作業となりました。お客様ともども、内心ヒヤヒヤでしたが、何とか力業で完成させました。

安全教育事故事例動画作例・東京電力様

新幹線並の特急制作

事故事例が六つあり、それぞれ全く違うシチュエーションですから流用できるCGモデルはありませんので、モデリングだけでも膨大な分量となります。さらに全部のVTRの合計尺が7分以上もあるというボリューム感。CGは1カット10秒を作るだけでも普通は数日かかる作業なのですが、7分間ものフルCG動画を実質わずか二週間でゼロから制作するわけですから、特急も特急、まさに新幹線並みの案件です。
さらに悪いことに新型コロナウイルスの感染拡大でエンドクライアントである東京電力の担当者さんと対面で打ち合わせるチャンスもなく、加えて私たちデキサとの間に東電さんのハウスエージェンシー(系列の広告代理店)が入って、さらにその川下に映像制作会社が入っているという状況。つまりエンドクライアントである東電さんと弊社デキサの間に二社入るという、私が苦手とする伝言ゲームの現場ということです。私はその映像制作会社の社長と一回面談しただけで、あとは書面だけのやりとりでこの厳しいスケジュールの中で闘うことになりました。

事故再現CGモデリング

東京電力様の案件で制作中のプロジェクト画面

いつもなら弊社は、こういう伝言ゲームの仕事をあえて取りに行くことはありませんので、普段なら正直なところお断りする案件なのですが、事情を聞くと「これはウチじゃないと間に合わないな」と感じたもので、私の独断でお引き受けすることといたしました。
そもそもこれほどスケジュールが逼迫したのは東電さんに責任があるわけではないし、完全に間の映像制作会社の読みが甘かったとしか言いようがないので、これではさすがに東電さんがかわいそうです。(制作会社の社長さんも、この事は自覚もあり、丁寧な謝罪と対応をしていただきました。大変感謝です。)

制作にあたり、私たちの前に担当していた業者さんが途中までお作りになった映像と、CGのモデリングデータは頂戴したのですが、何せ途中ですから全く形になっていません。私たちに相談が来る前に、前の業者が二か月以上かけて作ったらしいのですが、とても二か月かけて作ったようなものではありません。モデリングデータも弊社とは基本的に使っているソフトが違いますのでアテにならないし、この程度ならゼロから作ったほうが全然早いという状況。こういう時は固まりますよね。

本当のスペシャリストってこういう人たちだよね

さて、泣き言を言っても始まらないので、制作を始めました。最初にやったのがスタッフ集め。この分量を短期間に制作するとなると、弊社デキサや私だけのリソースでは全く間に合いませんので援軍は必要。さらにその援軍もよほどの腕利きでなければ間に合いません。さっそく仲間のクリエイター達に電話。スタッフ繰りは、いわゆる「いつものメンバー」にしました。NHK、テレビ朝日、日本テレビ、TBS、テレビ東京と、多くのキー局で名前を売っているプロフェッショナル達です。ギャラは高いが仕事は確実。ブラックジャックみたいな連中です。
CG制作のスタッフといっても色々いて、私のような生粋の現場人から見たらそのレベルは色々です。「まあまあ普通のCGなら作れるだろうな」というレベルから、「こいつがいなきゃ始まらない」というレベルまで多種多様。時間が無い時にお情けで「お勉強中の人」を使うわけにもいかないし、こっちの脚が引っ張られるのも不愉快なので、「先生級」の助っ人を呼びました。
こういう本当のプロのクリエイターは今時流行らない「24時間働けますか?」のノリで、24時間電話にスパッと出る連中です。つべこべ言わない。仕事が好きで好きでたまらない。ということですぐに体制が整いました。早速制作スタート。

また、一応弊社では「特急CG制作」というサービスも行っておりますので、一応宣伝しておきますね。何かあれば以下のリンクのページをご覧になってみてください。

>>参考~特急CG制作のページ

コンテワークから担当

CGで動画を作る際に特に重要なのがコンテ。コンテの作りかたは通常「理想論ありき」です。つまり「こういう画がベストだよね」という理想をそのままコンテにするわけです。ところが今回の場合は時間が無いので「技術的にこれなら時間がかからないよね」という現場主導のコンテワークも、ある程度は必要になります。
似たような画であったとしても角度を少し変えるだけで数倍手間がかかったり、また手間が減ったりするのがCGというものなのです。特にここまで短納期の仕事になると通常の仕事の方法では難しいわけです。
こういうテクニカルな知識をベースにしたコンテを描けるのは私たち現場のクリエイターしかいませんから、元請けのハウスエージェンシーさんから受注した映像制作会社には申し訳ありませんが、こっちで全部コンテを描くことになったわけです。映像の世界においてコンテを描くってことは、つまり「監督をする」ということと同義です。結果としてほぼこちらで主導権を握らせてもらいました。というより自然とそうなってしまうし、そうじゃないと間に合わない。スタイルにこだわってる場合じゃないし、お客さんにいい顔をしている余裕なんか皆無。それができるのも、CGのみならず映像作品全体をプロデュース・ディレクションできる弊社ならではの強み。全部お任せください。そのほうが効率がいいので。

キャラクターをどう見せるか?

さて、CGで事故再現するというと、とても良いアイデアのように思われると思います。しかしデメリットもあるのです。それは、例えば複数人数がからむ事故の時に「誰が誰だかわかりにくい」ということです。実写のテレビドラマでも登場するキャラクターが多くて個性が薄いと、途中で何が何やらわからなくなりますよね?あれと同じ状況になるのです。
東電さんの場合、社員さんも他の方々も、同じ作業服であるとのこと、となると、例えば登場人物が3人いたとしたら、全員青い作業服うこと。これはCG映像的には本当に困る。しかも視界が悪くならないように規定でヘルメットから髪がはみ出ているのもNG。となると髪型でキャラクターを分けるのも難しい。そこで仕方なく本来は青一色であるはずの作業服ですが、色を変えて対応。別に作業服の色に特別な意味はないでしょうから、これで解決。ついでにヘルメットの色も二色使い分けました。これでかなり直感的に誰が誰だかわかるようになりました。
普通なら、こういう変更は、一回青い服でアニメーション作ってみて、それをお客さんに見せて「なんかキャラクターが混同しません?」と見せてから手直しするのですが、コロナ流行で対面での会議が難しいのと、そういう普通の段取りもやってる時間が無い特急案件なので省略!

CGは打ち出の小づちではない

そもそも論として予算が厳しい仕事でしたので、最初にウチに仕事の相談が回ってきた段階では「おい!何かの冗談か?」と言ってしまうような値段。これもエンドクライアントである東電さんが悪いわけではないのです。CGというものを理解していない映像制作会社にはありがちな事です。つまり提出した見積書がそもそもまるでCGの手間を分かってないということです。見積書をマトモに書けないなら請けなければ良いのに。
CGを打ち出の小づちか魔法のように考えているのでしょう。キーボードを叩いて「開けゴマ」と言えば開くようなイメージで考えているのでしょう。しかしCGはそんなものではありません。粘土細工を三次元空間の中でマウスやペンタブで作っていき、そこに動きをつけるような仕事です。当然、木彫りの仏像を作るのと大差ない手間がかかるのです。そこが映像のプロたる映像制作会社の人間にも理解してもらえないから困る。

「CGは安価になった」

確かにそうなのです。私もそうよくお客さんに説明するし本当のことです。しかしそれは私たちのように実地の現場で自分の手を動かしてCGを作るクリエイターが、工夫に工夫を重ねて成し得てきた成果です。CGの「し」の字も知らない人が「CGは安価になりましたからぜひ使いましょうよ」なんて軽口をたたいてほしくないです。
CGが安価に作れるのは「限られた条件下」でのことです。そして技術の進歩によってその「限られた範囲」が徐々に拡がってきたということであり、その限られた範囲を知らない人が間に入ってプロデュースした瞬間に机上の空論が全開です。いくらお金があっても足りません。
ですから、お客さんも仕事の振り先には本当に注意してほしい。CGを知らない、作れない人にCGの案件など持って行くべきではありません。大変なことになります。ハリウッド映画を作るのならアメリカの国策ですから投資も集まるでしょう。しかしそうでもないなら素直にCGのプロを呼んで、その人に相談しましょうよ。普通に現実的な金額に収まるように考えてくれるはずです。そういうCGのプロならCGを使いこなせる映像制作会社を紹介してもらうことも可能かもしれません。

私たちのように映像制作会社でありながら、CGを作ることもできる「CG動画制作のプロ」であれば、一気にそういう問題が解決できます。先に述べたように、時間が無いなら、その時間内で間に合う方法論のみでコンテを構成することも可能です。こういう現実的な手法をとれるのも私たちがプロだからです。映像をつくることとCGをつくることは似ているようでまるで違う作業ですから、CGを知らない映像制作会社など、まるで役に立たないのです。

CGを使った社員教育動画なら弊社にぜひ

ブログなのでかなり辛辣に書きましたが、映像の世界はピンキリです。映像の制作者に免許はありませんが、明らかに免許皆伝と言える人とそうでない人が混在しているのもこの業界の特徴です。

とにかくCGは便利な道具ではありますが、ホントによく理解している人に仕事を振らないと大変な混乱が起きるのもまた事実です。無用な混乱を避けるためにもぜひ私に直接ご相談ください。電通や博報堂のような(他にもありますが全部挙げたらキリがないので二社まで)大手広告代理店なら普段からCGを使い慣れているクリエイティブディレクターがいるので大丈夫でしょうが、そういう大手でなければ、私たちプロに直接相談したほうが安全です。あの東京電力さんでも振り先を間違えただけでこれほど苦戦するくらいですからCGの案件というのは難しいしわかりにくいのです。
私たちなら、お客さんから直接お話をうかがい、やりたい事と予算をうかがった上で現実的な方法論の提案をいたします。オーダー内容に気になる点があれば理由も現場レベルの作業手順からご説明し、回避する方法もご説明しますので安心です。難しい事は私たちプロに任せてもらい、お客様は途中経過のチェックをするのみで、普通の映像制作と何ら変わりません。極めてスマートな現場運営が可能です。

CGを使った社員教育や安全教育動画を制作したいなら、自社で制作することができる専門家集団である弊社に「指名案件」としてお声掛けください。

>>社員教育動画制作のページ

下記バナーの問い合わせフォームからでも結構ですし、お急ぎの案件や、細かいニュアンスを伝えたい場合はどはお電話でも対応いたしております。年末年始も休みなく通常通り仕事をしておりますので、ぜひご遠慮なく。

>>映像制作の現場からTOP

メールでのお問合せロゴ