ウェブ動画マーケティング術セミナータイトル

ウェブ動画はどうあるべきか?

前章では静的コンテンツと動的コンテンツを単一のメディアの中に束ねることがマルチメディアの本質であるという話をしました。そして通信速度の向上によって動的コンテンツを気軽に活用することができるようになるため、今後は明らかに動画の活用が増加するだろうことは明白です。

ウェブサイトの構成要素

テキストや画像を静的コンテンツ、動画や音声を動的コンテンツと呼ぶこととします。

では、動的コンテンツの代表を動画だとすると、ウェブサイトにおける動画は一体どうあるべきか?という疑問を誰もが持つかと思います。

テレビと同じことをするな

動画コンテンツの代表格と言うとテレビ番組ではないでしょうか?24時間絶え間なく放送されているのですから、その規模たるや恐ろしいものがあります。私自身もテレビのディレクターやプロデューサーをやってきたのですが、今でもその規模が感覚的につかめていません。というより数字を知ったところで私には実感を持って理解できる規模ではないと思います。

とはいえ、テレビを参考にしてウェブの動画を作るのは、実はあまり賢い作り方とは言えません。なぜならテレビとウェブはメディアとしての特性があまりにも違います。テレビ番組としては優れているコンテンツであったとしても、それをウェブに公開したからといって、視聴者が受け入れるかどうか?という点では疑問符が残ります。テレビにはテレビの、ウェブにはウェブの動画の在り方があるものと思います。

VODサービスは参考にならない

…という話をすると、「じゃあ各テレビ局がやってるウェブでのVODサービスはどうなんだ?局によっては単月で黒字を出したところもあるよね?」という話が出ると思います。
しかし考えてみてほしいのです。VODでテレビ番組を観る時というのは、「〇〇という番組を観たい」という大前提がそもそも視聴者側にあって、その番組を観る手段がVODサービスしか無いため、それを頼るわけです。つまり検索キーワードは「(番組名)」である場合が多いということです。これは一般的にGoogleで動画を検索している人とは事情がまるで違うのです。

一般的には動画を検索する際、Googleの動画検索で「肩こり解消_健康器具」などと一般的な単語で検索することが多いはずです。つまり知りたい情報をそのまま検索キーワードにするということであり、わざわざ「あるある大事典_肩こり」や「ためしてガッテン_肩こり」などと検索するほうが特殊です。

検索ワードから逆算したコンテンツ制作

インターネットというのは、専門家に言わせればいろいろ定義があるのでしょうが、要するに何も整理されていないサーバーのカタマリのようなものです。そのサーバー同士が電線でつながっていて群れを成し、その中に様々なコンテンツのファイルが入っています。

このファイルの中から目的のファイルを探す時、インターネットの利用者はどうするのでしょう?もちろん検索エンジンを利用しますね。先にご紹介したようなテレビ番組のようなものなら、番組名をググってファイルにたどり着くことができるでしょう。しかし有名でない動画コンテンツの場合は、そのタイトルで検索されることは全く期待できません。ではどんな検索ワードで探してもらえば動画を観てもらえるのでしょう?答えは簡単、一般名詞や一般動詞です。

複合キーワードを意識する

私ならクライアント様からウェブ動画を依頼されたら、可能な限りシンプルな一般的な関連ワードを並べて、その中からいくつか主要なワードを選択し、それをタイトルの一部として活用します。
さらに言うなら、これはSEOをある程度理解している人ならご納得いただけると思うのですが、私が常に重要視しているのは二語の組み合わせによる検索キーワードです。Googleなど検索エンジンで記事や動画を探している人というのは明確な目的意識を持っています。ですから一語のビッグキーワードで検索をする人よりは二語から三語程度の複合ワードで検索をする人を効果的に捕まえたほうが、より意欲の高い人を自分のサイトや動画ファイルにランディングさせられるのです。
かつてブラックハットなSEOがウェブサイトを活用したマーケティングのトレンドだった時は、盛んに「スモールキーワード」という言葉が使われていましたが、二語から三語の組み合わせによるキーワードを、スモールキーワードと表現することが多いようです。
その反対に一語で検索数の多いキーワードをビッグキーワードと言いますが、こうしたキーワードでトラフィックを稼ぐことを狙っても、競争が激しいので即効性もありませんしお勧めすることはできません。

例えばですが、あなたが酒蔵の経営者で、動画を作ってYouTubeにアップして集客につなげたいと思っているなら、「日本酒」などというタイトルは付けてはだめです。「日本酒の飲み方」「日本酒の保存法」「日本酒の選び方」などは有力候補となります。もっとも、日本酒の動画がたくさんあふれている今やるなら現実的にはこの程度ではダメで、もっと工夫する必要はあるかもしれませんが、考え方としてはこういうことです。

スモールキーワードの絨毯爆撃

さらに私が動画のプロデューサーなら、こうしたスモールキーワードでのタイトルの動画をパターンを変えて複数本用意し、「日本酒」というビッグキーワードに関連する動画を大量生産し、絨毯爆撃を行います。それも徹底して行います。お金は多少かかるでしょうが、これは弊社でも実績のある方法論です。

例えば看護技術のウェブ動画で「看護roo!」というサイトがあり、私たちも初期の頃から立ち上げに参加してきましたし、最も動画本数を多く制作しています。このサイトの動画は1分から5分程度の尺で、全体で300本を超える数ですが、Googleの動画検索で看護技術に関連するキーワードを様々なパターンで検索すると、必ずと言って良いほど上位表示されています。

特に重要なのは、こうしたマニュアル動画を検索する際は知りたい情報が決まっている場合が多く、検索ワードも具体的なものが多いということです。ですから「看護技術」などという単体のビッグキーワードでは普通は検索されません。コアな専門用語の組み合わせで検索されるという特徴があるのです。そのため、本数が多ければ多いほど、網羅する範囲が広ければ広いほど、視聴者の目につく機会が増えるという効果があります。

視聴者を逃さない工夫

さて、複合キーワードで検索して動画を観に来てくれた人は、「知りたいことを調べるために検索した人」ですから、相応の「前のめり姿勢」の人です。目的意識を持ってその動画を探して再生してくれています。
テレビ番組などの場合、たまたまテレビをつけた人に前のめりになってもらうところから始める必要があるので、番組冒頭に「アバン」と呼ばれる導入部分を作るのですが、検索で訪問してくれた人にはそんなもの時間の無駄でしょうから省きましょう。
ではこういう人に最後まで動画を観てもらうにはどうしたらよいのでしょう?ただ漠然と「良い動画を作れば最後まで見てくれるだろう」などという考え方はこの際捨ててください。もっと具体的に作戦を練らないといけません。

動画の尺について

まず動画の尺ですが、内容が持つギリギリの尺にしましょう。
尺というのは業界用語で、いわゆる「上映時間」のことです。映画なら上映という言葉が適切ですが、テレビの場合などは上映するわけではないので、「放送時間」と呼びます。とはいえウェブ動画の場合は決まった言い方がありませんので、総じて「尺」という、昔から映画やテレビの業界で使われていた用語で言い表すことが多いようです。
最初のお取引で私たちの作品に対する姿勢をご存じない場合などは、「5分のウェブ動画を作りたい」という相談の電話を頂戴する場合があります。しかし、なぜ5分なのでしょう?5分である必然性はあるのでしょうか?
尺というものは編集を進めていき、フレーム単位で無駄をそぎ落とし、最後に残った結果のはずで、最初から5分と決めてかかるのは非常にナンセンスです。

インフォメーションとインテリジェンス

YouTubeの検索上位の動画の尺の平均値を見ると、およそ4分と言われています。しかしこのデータを根拠として「4分を目安に作れ」というアドバイスをするのは間違いです。なぜこの4分前後という結果になっているのかを考える姿勢が大切です。

情報の三段階英語で「情報」のことを表す言葉として代表的なのが「data」と「information」、そして「intelligence」です。
「4分が上位表示動画の平均だから」という情報はあくまで平均値という「データ」を元にした「インフォメーション」に過ぎません。これは客観的情報であって、その背景などの推察がそこにはありません。なぜ4分なのか?その理由を推察して結論を出してこそ「インテリジェンス」と言えるのではないでしょうか。

私の意見としては、構成がシンプルな単一テーマのマニュアル動画などの場合、この程度の尺で情報を伝えきるのではと分析しています。つまり「4分」が上位表示の理由ではなく結果だということです。

また経験則からのお話で大変恐縮なのですが、夕方のニュース枠の中で、ストレートニュースではない、ラーメンなどの店を扱うような情報企画コーナーがあります。私も「スーパーJチャンネル」という番組で初期の頃、たくさん丸川アナ(今では政治家ですが)とラーメン店を回り、取材をしてきました。
ニュースですから番組は生ですし、二時間枠という縛りもあるので、およそ13分から17分の間を目安にVTRを作るとちょうど都合が良かったのですが、いろいろ試行錯誤していく中で、このくらいの尺の中ですと4軒のお店を紹介するとちょうど良い情報密度になるようです。つまり、これより長くなると冗長になるし、これより短いと尻切れトンボに感じてしまうのです。
結果として編集をガンガンやって無駄をそぎ落とすと、結果として4分を4軒で16分。このあたりに収まることが多かったように思います。
視聴率的にも私が思う「ちょうど良いバランス」が一番グラフが伸びていたので、結果として私のディレクターとしての能力では、1つのテーマで4分持たせるのが精いっぱいだということでしょう。

単一テーマの場合、これより長いと冗長な印象になり、これより短いと消化不良が起きるわけです。つまり尺が4分だから良いのではなく、単一テーマで情報がよく整理されており、視聴者が最後まで滞在してくれる動画の尺が結果として4分程度になる場合が多いということであり、4分の動画を作ったから視聴者が喜んで観てくれるわけではないということです。
ですので尺は無視して良いので、内容のことだけを、視聴者の心理だけを合理的に考えていくことにしましょう。

内容を考える

尺については以上にして、今度は内容を段階的に考えてみたいと思います。とはいえ動画や映像には正解というものがありません。ここにご紹介しているのは経験を元にしたあくまで私の私見ですから、視聴者にとってプラスになるならどんなものでも構わないのは当然という前提で読んでいただければと思います。

タイトル

オープニングタイトルは短いほうが良いと思います。というより、もしYouTubeや自社サイトなどに貼り付けるのなら、タイトルはすでにサイトのヘッダーにテキストで書いてあるでしょうから、動画のアタマに入れるタイトルは省いても結構です。
いつも思うのですが、あれは不要です。単なる文字ですから、そこに情報は正直あるとは思えません。
会社のロゴを最初に入れるのも、できたら避けたほうが無難です。

これは動画ではなくサイトの事例ですが、検索エンジンの利用者の場合、サイトの読み込みに3秒以上かかると、待てずに逃げてしまうのです。
何秒で本題に入るか?をサイトが競っている状況なのに、5秒も会社のロゴを見せたり、タイトルのつまらない文字を見せることに、果たして意味があるのかどうか?ここは熟考すべき部分です。

最初に見せるべき内容

動画は本題から入りましょう。本題から入って、この動画が視聴者の希望する情報を与えるための動画であることを知らせ、安心してもらいましょう。
冗長な言い回しは避け、最初はストレートに結論の概略から入ります。
テレビの世界では「起承転結」をそのまま順を追う構成は視聴率を取らないというのは常識となっています。そのため「どんでん構成」という、「結起承転結」という構成をとることがあります。
まず一番最初に結論を知らせてしまうのです。そして、結論の概略を知らせた上で、今度は一般論から説明し、「しかし」で話を転じて、最初の結論にどうしてなったのか?という論理を解説します。こうした構成のほうが視聴率的にもこれまでの経験では良好な結果を出しています。

驚きの必要性

これはウェブ動画の場合、マストではありませんが、情報はできる限りオリジナルで他に類のないものが望ましいでしょう。
古い情報でも、切り口を変えたり、また他の専門分野からの意見を交えつつ、一般的に知られている情報をそのまま扱うような動画だけは作らないほうが無難です。何か新しい視点や切り口が必要だと思ってください。
なぜこうした視点が必要かというと、それが視聴者にとっての「驚き」となるからです。驚きというのは感性を揺さぶられることでもあるので、一言で言えば「感動」の一種です。こうした感動を演出することも大切なマーケティング動画の要素となりうるのです。

共感の必要性

感動つながりでもう一つ、共感の演出というのも必要かもしれません。「自分と関係ない」と思われたら、その動画は誰にも見られず埋もれてしまいます。例えば私も関わっていた「あるある大事典」が高視聴率を取っていたのも、この「あー、あるある!」という共感をベースに番組全体が構成されていたからに他なりません。
また「プロジェクトX」が視聴率を取っていたのも、主人公が名もないサラリーマンだからです。世の中の99.99%の人は普段主役に躍り出ることのないわき役の立場にいます。こうしたわき役が実は世の中を動かすような製品を生み出していたという事実が、わき役に甘んじている世の中の視聴者層に受け入れられたのだろうと分析しています。これこそつまり「共感」のすごさです。

深く突っ込む奥行きの深い動画

ウェブの動画は検索というフィルターを通った人が見に来てくれていますので、その人たちは、ある程度その動画の分野には興味があり、多少の知識があると思った方が安全です。となると、不特定多数の方々に見せることを目的とするテレビ番組よりは、情報も突っ込んだものでないと、途中で冗長と判断されて滞在時間が短くなる可能性があります。
普段の感覚より一歩先に踏み込んだ情報まで含めて動画を構成するようにしましょう。

客観性の重要性

客観的な映像作品を作ることも大切です。視聴者は賢いので、企業のPR動画がその企業の広報費で制作されている裏事情を充分に理解しています。つまり、あまり露骨な自画自賛をしてしまうと「あー、自画自賛よね」と思われて視聴モチベーションを無くしてしまいます。
こうした状況を避けるためには主語を誰にするかはとても重要です。例えば企業様が自社の紹介動画で「私たち●●株式会社では」と開口一番にやってしまうと、それはすごく狭い入り口になってしまいます。もっと客観的なナレーション文言を計算して作り、例えば入り口のナレーションを「もしもあなたがこんな事態になってしまったら?解決策はあるのでしょうか?その解決策を一緒に探してみましょう」などといった導入を作り、誰もが陥りそうな危機(交通事故や財布忘れなど)を導入に使い、しかも会社名はなるべく最初から明かすことなく体験型の映像として視聴者に楽しみながら入っていただくのです。会社名を刷り込むなど情報の押し付けは最後で結構。最初はやわらかく地べた(生活に近いところから)から入るのが私たちデキサ流の演出です。

動画単体で完結させる必要が無い

さて、これまでご紹介してきたように、ウェブサイトというものは「マルチメディア」の一種であり、静的コンテンツと動的コンテンツを効果的に一つのメディアの中に束ねるという特徴があります。そしてテキスト、画像、そして動的コンテンツ(動画)をどう組み合わせて連携させ、同一のレイアウトの中に組み込んでいくか?という課題を実現できた時に、その存在意義を最大化できるものと思います。
今はまだ、YouTubeなど動画サイトも、単なる動画の置き場所という印象が強いサイトですので、テロップ文字や表やグラフといった静的コンテンツを動画の中にカットとして編集してしまって良いとは思いますが、今後はさらにこうした「静/動」のすみわけが進み、ナレーションで説明するような文字ベースの情報を、少しサイトのほうのテキスト情報に回して動画の負担を減らすなどの流れも起きるように感じています。
自社サイトのほうに動画を張り付けるなら、うまくテキスト情報やグラフ、図版など静的コンテンツはサイトの中に普通に表示させ、動画でなければ伝わらない部分のみに集中して動画を活用するなどの工夫があっても良いかもしれません。
それでいて動画では徹底して深堀した情報があれば申し分ない出来栄えの振り分けができると思います。一度試してみたい方法ではあります。

さて、今回は軽く流す程度でしたが、ウェブというメディアの中で動画ファイルがどうあるべきか?簡単に説明を試みました。

 

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