ウェブサイトの構成要素
さて、ウェブサイトというものの本質を知ることは、ウェブ・マーケティングの道具を知ることです。道具を知らなければ仕事はできません。少しウェブサイトというメディアの本質について考えてみましょう。
ウェブサイトは何でも入る箱
まず、ウェブサイトを構成するのは文字としてのテキストデータ、イラストや写真などの画像データ、そして音声や動画といったコンテンツです。
ここでは便宜上、テキストと画像を静的コンテンツと呼び、音声や動画などを動的コンテンツと呼びますが、ウェブサイトの特徴として、これら静的・動的問わず何でも入ると言っても過言ではない包括性です。そしてこれがウェブサイトの強みと考えられます。
この中でテキストと画像は書籍などでも旧来から使われていた組み合わせなのでウェブサイトの本質とは言えません。
同様に、動画/映像や音声ファイルだけというのも、ラジオやテレビなどの放送メディア、そしてCDやDVDといったディスクメディアなどでおなじみの形式なのでウェブサイトの本質とは言えません。
今現在は(このサイトもほぼそうですが)多くのウェブサイトがテキストと画像を中心に構成されています。とはいえ、この静的コンテンツの組み合わせは書籍や新聞などの紙メディアでも可能な範囲ですので、実はウェブサイトというメディアの本質的な利点を活かしているとは言いにくいのです。
また逆に動的コンテンツに関して言えば、今はYouTubeなど動画サイトに動画を丸ごと投稿されているだけで、これではテレビ放送と一体何が違うのかよくわからないという状況です。せいぜい好きな時間に観ることができるかどうか?という違いだけでしょう。
動画を組み込み可能な事がウェブサイトの強み
音声や動画などの動的コンテンツをテキストや画像など静的コンテンツに組み合わせることはウェブサイトによってのみ成しえた組み合わせです。つまりウェブサイトのような「マルチメディア(少し古い言葉ですが)」の本質は、この「静/動一体」という組み合わせができるという事と近似であろうと思います。
もちろん先進的なウェブ開発者たちはその事に気が付いていて、例えばワードプレスのテーマなどには動画を簡単に活用することができ、レイアウトも整うような工夫がされているものが多くなっています。
確かにこれまでにも書籍にDVDを付録として付けるなど、「静/動一体」の試みがなされてきました。しかし書籍の本質は紙ということにあり、せっかく特別なプレーヤーを要することなく、どこにでも気軽に持ち運べるという優れた利点があるのに、なぜプレーヤーという機材を要するDVDを付ける必要があるのでしょうか?これでは書籍とDVDの内容を連動させればさせるほど、書籍をプレーヤーの前に縛り付けることになってしまいます。
私の会社でも多くの大手出版社様から書籍付属DVDの制作依頼を頂戴し、かなりの本数を制作してきました。その経験則の中で試行錯誤は行っていたのですが、書籍とDVDの両方のメリットを活かそうとすればするほど、それぞれの独立性が高くなり、「同じテーマの書籍とDVDのセット販売」という状況に終わってしまうというジレンマを抱えていました。
メディアミックスとマルチメディアの違い
さて、この「静/動一体」というウェブサイトの特性をより深く理解する上でも、マルチメディアという考え方を把握しておく必要があると思います。
マルチメディア
マルチメディアという言葉は1990年代に登場し、概念としては静的なコンテンツと動的なコンテンツを包括的に扱うというもので、まさにウェブサイトがその一つにあたります。
ウェブサイト以外にも、例えばHTMLでファイルを紐付けしてレイアウトしたCD-ROMコンテンツや、今は廃れてしまいましたがAdobeFlashのようなものも、類似するメディアと言えます。これらの共通点は何らかの記述言語によってさまざまなファイルを並列的にまたは階層的に紐付け、全体として一つのコンテンツをなすということです。
メディアミックス
マルチメディアと少し似た性質の言葉で、昔、「メディアミックス」という言葉がやたらと使われた時期がありました。メディアミックスというのは、各々のメディアが独立性を保ちつつ連携して一つの題材をコンテンツ化して同時並行的に訴求を行うような概念です。
例えば、ある小説が売れたら、その小説を元にした映画を作り、さらにはマンガまで出すといったイメージです。元となる小説の知名度があるので映画も売れるしマンガも売れるため、マーケティング的に考えると大変効率的な概念です。また、例えば人気アニメを逆にマンガ化した場合などはコミック雑誌が売れ、そのコミック雑誌の中に掲載されている他のマンガも購買者は目にすることになるので、さらなる購買者獲得の相乗効果も期待することができるという一石数鳥のおいしい手法として定着してきました。
それとこれは誤解が多いのですが、アニメのキャラグッズなどは確かにメディアからの多角展開ではありますが、メディアミックスには含まれません。あくまで「メディア」ミックスですから、商品がメディアであることが必須条件です。
このメディアミックスは、今では戦略的にも一般化しすぎたため陳腐化している言葉ですが、1990年代の中盤あたりは何かと言うと伝家の宝刀のように、この言葉を出せば企画が通るというくらい乱用された言葉です。
DVD-BOOKの野心的な挑戦
さて、このメディアミックスの派生形が、先にご紹介したDVD-BOOKです。DVDが付属した書籍のことを出版業界で正式に何というのか知りませんが、DVD-BOOKというのは私が作った造語で黎明期からウェブサイトなどで使ってきた言葉です。
本とDVDが同じテーマで同じ章立てで作られることが多く、また中身も書籍は書籍の、映像は映像の強みをある程度は意識してアレンジしているとはいえ、大体は同じ内容をトレースしています。その意味ではメディアミックスの一つと捉えられないことはありません。またユニークなのは、書籍とDVDという別のメディアを一つのパッケージにして販売することを前提としていることです。一般的なメディアミックスでは同時並行的に各メディアがコンテンツを展開し、それぞれが収益を得る構造になっていますが、一つにまとめて売るという発想ではありませんので、ここは面白いポイントです。
私が思うに、このDVD-BOOKが狙ったのは、まさに「静的コンテンツと動的コンテンツを一つのパッケージに内包すること」でした。つまり書籍業界が既存の流通経路を活用しながらマルチメディア化しようという野心的な試みであったと考えています。
とはいえ一時期は隆盛を誇ったこのDVD-BOOKは、今ではかなり数が減っています。電子書籍が普及するころには出版社もDVD-BOOKの人的/財的リソースを電子書籍に振り分けた形で、自然消滅しているに等しいメディア形態です。発想は良かったと思いますし、今でもあっても良いようにも思うのですが、しかし書籍というメディアの持つ特質とDVDというメディアの持つ特質が相容れず、少々無理があったということなのかもしれません。私は割とよく書店で購入して便利に活用していたので、少々残念に思われます。
電子書籍の将来
さてDVD-BOOKの失敗(失敗と言って良いかはわかりませんが)以来、出版業界が力を入れているのが電子書籍です。これまで作ってきた紙のコンテンツを電子化してファイルとしてパッケージするものですが、この将来像がどうなるのか?私は今後多少の混乱がありつつ、独自フォーマットのものは消えるか収束していくかの方向になるのではと予想しています。
とはいえ電子書籍のファイルフォーマットには動画ファイルを扱えるものも少なくありません。一部のファイルで条件付きみたいな話は耳にしますが、大方の電子書籍ファイルには動画が入れられるはずです。
こうなると、もう電子書籍のフォーマット合戦などという次元の話ではなく、出版社さんも事実上マルチメディア屋さんです。今はまだ既存の静的コンテンツを電子メディアにすることにリソースを費やしていますが、今後は紙媒体で鍛えてきた企画力を武器にしてマルチメディアを作っていく可能性があります。そうなると、もしかすると既存のウェブ業界の先行企業とは競合関係になる可能性も考えられます。
また彼ら出版社は10年近く動画を制作してきた実績があります。そのため映像制作会社との付き合いもありますし、動画コンテンツの制作に動こうと思えばいつでも動ける状況にあります。
静的コンテンツのプロにして、動的コンテンツをかじっている彼らが、次に向かうのは果たしてどのような舞台なのでしょう?もしかしたら真の意味で静的コンテンツと動的コンテンツの理想的な融合を真っ先に実現する可能性だってあるのです。
動画を征服する者がウェブを征する
これまで見てきたように、メディアの歴史を振り返っても、静的コンテンツと動的コンテンツを融合させようという試みで最も先進的かつ積極的だったのが、実はメディア業界の中で最も保守と思われている出版社なのです。
また、ご紹介はしませんでしたが、メディアミックスの祖先とも言えるのが、実は角川書店です。自社が扱う小説を映画化することで、映画でも利益を上げ、同時に小説本も売り上げが上がる。さらに映画など映像コンテンツを持つことによってテレビ局などに対する一定の影響力を得ることも期待できるわけで、1970年代にこのような試みを行った冒険心を持つ人がいたことは特筆に値するものと思います。
出版不況と言われる業界で、現状ではあまり注目されているとは言えませんが、意外な伏兵として出版社が静的コンテンツのみならず動的コンテンツを含めて攻勢を仕掛けてきたら、ものすごいムーブメントが起きるかもと、想像するだけでわくわくします。
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