ウェブ動画マーケティング術セミナータイトル

検索エンジンを知る必要性

さて、今回は少し話題を変えましょう。このウェブセミナーでは、動画のタイトルなどを決定する際には検索キーワードを意識することが大切だと述べてきました。検索エンジンを窓口としてウェブで動画を探す人が多い限り、検索エンジンというものを軸にして視聴者の行動心理を読むことは大切です。

そして検索について知るためには、基礎的な部分だけでも良いので検索エンジンについてある程度知る必要があります。私自身も理系の人ではありますが自然科学のほうなので、プログラミングは多少やる程度で、コンピュータは門外漢です。ですから完璧には把握しきれない部分もありますが、動画の検索に関係ありそうな部分のみ大枠で説明を試みてみます。

Googleは秘密主義

まずここで言う検索エンジンとはGoogleです。今は検索エンジンといえばGoogleの一人勝ちですから(Yahooも検索エンジンはGoogleを活用)他を意識する意味はあまりありません。
Google検索アルゴリズム(論理回路)は謎に包まれています。誰もが上位表示をさせたがっているため、もしアルゴリズムを公表してしまえばそれぞれのウェブサイトの管理人がそのアルゴリズムに対して対策をしてしまい、検索者の意図とは違うページが上位検索表示されてしまう可能性すらあります。
例えば、かつてGoogle上位表示のために「被リンク」が効果的という時代がありました。当時のGoogleは「良いサイトなら他のサイトから引用されたり紹介されるなど、リンクを受ける(被リンクされる)はずだ」「被リンクはそのサイトへの支持だ」という考え方から、被リンクの数をそのサイトのオーソリティ(権威づけの変数)として活用していたのです。

被リンクの概念図

様々なサイトからリンク(参照)されることを被リンク(BackLink)と呼ぶ

当然、このことを知ったウェブサイト管理人やSEO対策業者が、こぞってIPアドレスやドメインの違うサイトを作り、そのサイトから上位表示させたいサイトにリンクを送り、検索結果がメチャクチャになったことがあります。
かく言う私も当時は被リンクの効果を実感しており、数万という数の低品質な被リンクを自社サイトに撃ちこんだ経験があります。そして実際に当時はそれでサイトの順位が上がったのも確かです。ですからGoogle検索結果の上位には、検索者にとって有益というより、お金と手間をかけて被リンクをたくさん得ているサイトが上位表示されるという異常事態になってしまったのです。
その異常事態に対してGoogleは「パンダ」や「ペンギン」という名前がついたアルゴリズムを導入して改善を行いましたので、現在ではこうした被リンクは全く意味が無いとは言いませんが、少なくとも検索順位に悪影響を及ぼしかねない危険性をはらむブラックハットな手法となっています。そしてこうした混乱が起きないよう、Googleは検索アルゴリズムに関しては徹底した秘密主義を貫いています。

Googleの検索アルゴリズムを類推する

とはいえ、Google検索は「検索者にとって有益なページを上位表示する」ということが目的なので、有益かどうか?という判断を常に行っていると仮定できます。さらには検索ワードと出力されてくる検索結果の相関関係も実際に試すことができますので、アルゴリズムのある程度の類推は可能です。

例えばクリック率。検索結果に列挙されるサイトのタイトルやスニペット(タイトル下段に表示される要約文)が検索者の意図にマッチし、興味をそそるものならクリックされるでしょう。ですので多様なIPアドレスからのクリック率は、おそらくアルゴリズムの中に変数として含まれているはずです。
また、そのページを見れば検索ワードに関連する情報が網羅されているかどうか?についてもアルゴリズムに含まれている可能性があります。これも検索者にとって有益かどうか?を考えれば当然のこととしてアルゴリズムに含まれるべき変数です。

さらに言えば利便性も考慮されたアルゴリズムになっていると思われます。例えばスマホなどモバイルの小さい画面で見た場合にレイアウトが崩れないようになっているか?文字が小さすぎないか?表示までの時間はかかりすぎないか?なども、そのページの信頼性を計る変数として有効なはずです。

このような数百のアルゴリズムの組み合わせ、というより階層構造やネットワークによってGoogleは検索順位を決定しているものと思われます。

Googleがニューラルネットワークで化ける

Googleのアルゴリズムは年々アップデートを繰り返しており、つい最近ですと2019年10月24日~25日に行われたアップデートが、ここ数年で一番大きなアップデートであるとGoogleが発表しています。

米国時間10月25日、Google(グーグル)は検索エンジンのアルゴリズムをアップデートしたことを発表した。ここ数年で最大で、検索者の意図の推測精度を改善するためにニューラルネットワークを利用する。

上記の記事で重要なのが「検索者の意図の推測制度を改善」という部分です。その改善のためにニューラルネットワークの働きを重要視したということでしょう。Googleは以前からニューラルネットワークをある程度は使っていましたし、今回は軸足をニューラルネットワークに移したという雰囲気の発言です。

ニューラルネットワークというのは、言ってみれば脊椎動物の神経細胞を模した論理回路のことです。これを使うことで一体何が変わるのか?そこを類推してみることにしましょう。そのためにはまずコンピュータと脳の類似点と相違点を理解しておく必要があると思います。

コンピュータの論理回路

ではまずコンピュータから説明してみましょう。たぶん専門学校や大学の情報処理では一番最初に学ぶ部分かもしれませんが、コンピュータの場合は「AND」「OR」「NAND」「NOR」という四つの「ゲート」と呼ばれる最小単位の組み合わせで論理回路を構築しています。このゲートには二つの入力があり、出力は一つという形をしています。四つの種類のゲートの働きをかいつまんで説明すると…

•AND…二つの入力に両方電気が流れてきたら出力から電気を流す
•OR…二つの入力のどちらかに電気が流れてきたら出力から電気を流す
•NAND…二つの入力に両方電気が流れてきたら出力をカットする(ANDの否定形)
•NOR…二つの入力のどちらかに電気が流れてきたら出力をカットする(ORの否定形)

という働きです。

コンピュータの論理回路記号の事例

コンピュータの論理回路はゲートと呼ばれるものの組み合わせから成り立つ

ここで重要なことは、どのゲートも入力が「あるかないか?」という1か0かの判定で動いているという事実です。コンピュータのゲートは、信号を1か0か?というデジタルな基準で動いているということです。このようにデジタル的に条件付けされたゲートの中を電気信号があみだくじのように流れていく間に結論が導きだされるような仕掛けだと思ってください。

神経網の論理回路

ではヒトを含めた脊椎動物の神経細胞はどうなのかというと、アナログ値で動いています。入力に対して神経細胞が反応し、「発火」と呼ばれる興奮状態を引き起こし、信号を次の細胞に伝えるという仕組みはコンピュータのゲートにとても似ているのですが、その発火するかしないか?の判定基準が1か0かというデジタル値ではなく、連続的なアナログ値なのです。
入力信号が0から1までの連続数で無段階に強度が変わると考えてください。例えばある神経細胞は「0.4」という値で発火を起こすとします。するとこの細胞はこれ以下の信号強度(刺激)では発火しません。この値のことを「閾値(いきち)」と言います。

脳は経験に学びます。細かいことは専門家に任せるとして(ぶん投げるようですみません)、それぞれの神経細胞は特定の閾値を持ち重み付けされていますが、経験を元にして閾値をダイナミックに変化させながら、出力結果がその生命体の個体として(または全体として)の利益となるように調整されていくのです。
まさに失敗の歴史がヒトを作るとはよく言ったもので、トライアンドエラーの学習の繰り返しの中で、最適な解を導き出す。そんな生命体の性質が見て取れる仕組みだと思いませんか?

この、アナログ的でダイナミックに変化する閾値を持つ神経細胞のネットワークが脳であり、脊椎動物の神経網となっているのですが、この性質をそのままコンピュータ上で数理的に再現しているのがニューラルネットワークというわけです。

ニューラルネットワーク概念図

Wの結線に、それぞれ重みづけがされており、結果をフィードバックさせつつ重みづけを変化させる

「いい加減」なニューラルネットワークが検索精度を高める?

Googleのニューラルネットワークが一体どのようなものかは、まだわかりません。しかしこれだけは言えるのですが、検索エンジンのように、ヒト(人間)の思考を裏読みして最大公約数的に「良い加減」の結果を出力するような仕組みを実現したいなら、ニューラルネットワークは最適だろうということです。

ある意味これまでのデジタルコンピュータの在り方は、まさにデジタル的で融通の利かないものでした。しかしコンピュータが人間の生活を手助けするためにも、ニューラルネットワークや、それを活用したAIのように「経験と結果からいい(良い)加減のパターンを探す」(入力と出力を比較して最適解に閾値を調整する)という考え方は、大変親和性が高いように感じます。

動画検索エンジンの今後を予測する

ニューラルネットワークはあらゆるものを「良い加減」にしてくれるものと思います。当然、今後の検索エンジンも、そうした傾向が高まるものと思います。
例えば動画検索。今はまだGoogle検索エンジンも動画の内容までは見ていないと思います。とはいえニューラルネットワークが画像の判定などにも活用され、犬と猫の違いを見分けられるようなアルゴリズムが存在する時代ですから、数年先はわかりません。Googleのアルゴリズムが動画を見てその中身を判断して分類し、検索者にとって有益かどうかを判断して検索表示順位を決定する?まさにSF映画のような世界観ですが、こうした世界はもう間近だと私は思っています。
逆に言えば、こうした世界の到来を予測して動き、Googleに親和性の高い動画コンテンツを制作した者が、今後のマーケティングを握るとも言えるのです。こうした時代が到来すれば、文字をスクロールするだけの安易な動画(もどき)コンテンツは鳴りを潜めるでしょうし、いよいよ本物の優れた動画コンテンツしか生き残れない時代がくることでしょう。

現状の動画検索対策

とはいえ私のカンでは、まだGoogleも動画の中身を見ている段階ではないと思います。私がその可能性を予見できるのですからGoogleに集まる優れた頭脳集団が試行錯誤をしていないはずはないとは思いますが、しかしまだ実用化するにはハードルが高いでしょう。
その意味では数年先を予見することも重要ですが、同時に現状のGoogle動画検索のアルゴリズムを逆読みして、動画を制作し、マーケティングに結び付ける努力も大切なことです。

 

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