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ウェブのメリット~その一般論をブチ壊してみる

さて、今回はウェブサイトというメディアの強み、メリットについて考えてみましょう。マーケティングに関わる部署で働いておられる方などで、「すでに基本は知ってます」という人は読み飛ばして目次に戻っていただき、知りたいところからお読みになれば良いと思います。

とはいえ、通り一遍のメリットの羅列などをしたところで、それこそこのページを読むメリットが皆さんに無くなります。そこで、一般的な視点ではなく、ちょっと斜めの視点から「ウェブのメリット」を考えてみたいと思います。

具体的に言うと、今回はマスメディアで働く立場から、一般的に「ウェブのメリット」と言われている項目を否定してみましょう。そして、それでも残ったものが本当の「ウェブのメリット」ということになるのではないでしょうか?

ウェブのメリット、その一般論とは?

まず、一般的に紹介されている「ウェブというメディアのメリット」は、大抵はどうでも良い情報ばかりです。こうした情報を客観的かつ学術的に本当に底の底まで分析している人というのが情報発信がうまくないらしく、なかなか有益な情報が世間に広まっていません。そのためメディアの現場を知らない人の意見が各種セミナーなどで広まってしまい、勘違いも多いのです。また、どちらかというと、大手マスメディアを否定的に見て、ウェブを買い被っている意見が多いと個人的には思っています。例えばですが…

  • 素早い発信が可能
  • 修正を公開後に行える
  • 安価である

などが、私が思う「どうでもよい情報」の代表格です。
これらのメリットは暗に新聞やテレビなどのマスメディアとの比較論として紹介されていることが多いのですが、比較対象としているマスメディアの巨大さと管理レベルを本当に見たことがあるのか疑問と言わざるをえません。情報の偏向性の疑いから様々に揶揄されて久しい大手マスメディアですが、情報屋としての緻密さは決して衰えているわけではないのです。

素早く公開できても低品質で良いのか?

まず「素早い情報発信が可能」というメリットですが、これは条件付きでしょう。
確かに数行のテキストの薄いページを1ページ増やす程度なら、マスメディアより素早くできるでしょう。ですがマスメディアと同等、もしくはそれ以上のレベルで突っ込んだ情報を整理整頓して間違いが無いようにチェックした上でパッケージングしてから公開するとなると、本当にそんなに素早い発信などできるものでしょうか?

もし仮に新聞と同じレベルの記事を公開するとなれば、危機管理の水準も含めて新聞と同レベルの編集能力が必要になります。こうなると「安価である」というメリットが消えます。あえて言うなら「低品質な記事なら素早く公開できる」という程度のことであり、品質に比例して結局のところ情報発信には時間がかかるのです。
ウェブだろうが新聞だろうが、相応の品質の記事を公開するなら、相応の時間と手間がかかるということです。

もっと言えば、プロのメディア人は訓練されていますから、本当に鼻が利くし仕事は早いものです。新聞も輪転機が回る時間には間に合わせるわけですし、テレビも放送時刻が決まっています。これらに合わせてコンテンツを制作するのは並大抵のことではありません。同じレベルの仕事ができるとしたら、それはマスメディアでたたき上げられた本物のプロフェッショナルだけです。

情報発信までの時間と、情報の品質は比例的な相関関係にあります。そのため新聞やテレビの報道機関にいるメディアのプロというのは、短い時間でいかに的確かつ良質な情報を提供するか?という点で苦労しているのです。
私も近年のマスメディアの在り方に対しては言いたいことが山のようにありますが、インターネット/ウェブの世界を良質なものにしたいなら、批判して悦に浸る暇があるなら彼らメディアのプロを分析して学ぶ目線を持つべきです。

偶発的な産物をメリットと言えるか?

他にウェブが早いケースとして考えられるのは、例えば何か事件や事故の瞬間の価値ある動画をたまたまスマホで撮影して、それをアップロードして公開するような場合でしょう。
確かにこうした動画がしょっちゅう動画サイトにアップされますし、テレビはその動画サイトの動画ファイルを活用して後追いで紹介する例も増えているので、ウェブのほうがテレビより早いと言えないこともありません。

しかしこれは数百万人規模の人たちのスマホのカメラのどれかが運よく撮影できたものがアップされてきたに過ぎないもので、あなたが今日、動画サイトのアカウントを取ってスマホを持って街に出たからといって、すぐにそんな動画を撮影できるわけでもありません。
つまりこうした事例はあくまで例外的かつ偶発的で偶然に頼るものであり、とてもウェブのメリットとして列挙するほどのものではないはずです。

テレビは「速報」が本質である

今度は動画つながりで、反対にテレビの速報性についてご紹介します。テレビというメディアが本質的に「ライブ」にあるということをご説明したいと思います。

生放送は中継現場などの「その瞬間」の動画を放送しているのです。速報性という意味においてこれを上回ることは難しいでしょう。
さらにコンテンツの品質という意味でも、テロップも中継車で作成して打ち込むことも可能ですし、ウェブ動画のライブ中継でこれを超えるとすれば、もはやテレビ局と同等のシステムと、それらを有効に活用できるプロのスタッフが必要になります。

それとこれはウェブのライブ配信のシステム的な事ですが、サーバーを経由しているタイムラグがあり、数秒の遅れが生じます。テレビの場合も放送事故を防止する意味でわざとディレイさせる現場もありますが、ウェブのライブ配信の遅れは機械的なもので放送のディレイとは本質的に違います。
私もテレビの生放送の仕事とウェブのライブ配信の仕事の両方でディレクターをした経験から言えば、タイムラグは絶対的にテレビのほうが少なかったです。ちなみに私の経験したウェブのライブ中継現場は30秒の遅延がありました。これは電話回線を通じてデータを転送する際に、転送レートが低くなってしまった場合を想定して、最初から遅延させておくという意味合いです。回線が太ければこんな遅延は必要ないのです。もちろんテレビの中継はこんな遅延は必要ありません。

以上のように、ウェブが情報の密度や完成度、そして速報性という点において、マスメディアを超えることは現段階ではありえません。お金をかけて大規模に作られる既存マスメディアには質でも量でもスピードでも、まったく太刀打ちできないのが現実でしょう。相手はプロです。ましてや素人がライティングしている程度のウェブサイトの情報がプロより質でも量でもスピードでも勝るということは絶対にありません。
勝てるとしたら、それはマスメディアと同等の規模でプロフェッショナルのスタッフが動いた場合に限ります。

修正前提で公開して良いのか?

さて、続いては「修正を公開後に行える」というメリットについてです。これも私に言わせれば「ちゃんとチェックして修正してから公開しろよ」という一言で終わりです。要するに記事の最終チェックが甘いから後で大幅に修正しなければならない事態になるのです。

プロフェッショナルたるマスメディアのスタッフたちは、修正できないという緊張感の中で毎日闘っているのです。「いつでも修正できるからテキトーでいいや」などという甘っちょろい考えは持っていません。

はい、一般的に言われているウェブのメリット三つが全部消えました。では、他にどんなメリットがウェブにあるのでしょう?

それでも残るウェブメディアのメリット

これまでは、一般的に紹介されているウェブというメディアのメリットを紹介しながら、それをマスメディアの立場から否定してみました。ここからは、マスメディアと比較して、それでも残るウェブのメリットを考えてみたいと思います。

ウェブは来訪者が限られるからこそ効果的

ウェブの良さについて「誰もが訪問できる」という説明をするマーケティング専門家が多いですし、それが定説化していますが、私はその意見には絶対的に反対です。
ウェブは不特定多数にたくさん訪問してもらうことを良しとするマスメディア的な価値観とは正反対のメディアだと言えます。もっと極端に言えば「訪問者が限られるからこそ効果的なメディアなのだ」と私は考えています。つまり、百人の熱意の無い人に見せるのではなく、たった一人の熱意ある人に見てもらえるからこそ意味があるという考え方です。

私はマスメディアでの仕事が多いので、「不特定多数の多くの目に触れるメディア」というものの限界を身体で理解しています。もしウェブというものがテレビのように「最大多数の最大幸福」を目指すメディアなら、私はここまでウェブというものを高く評価しません。
だいたい、多くの人の目に触れることがメリットだとしたら、それはテレビCMに絶対にかないませんし、不特定多数の人の目に触れたことで、それが売り上げに直結するかというと、それはまるで違います。

テレビCMなどの場合、例えば視聴率20%も取るようなキー局のゴールデンアワー番組に提供しても「コスパが悪い」と嘆いているスポンサー企業広報担当者は多いのです。ではなぜテレビCMをやめないのかというと、例えばイメージ戦略や企業イメージ向上のためなど(本当は他にも理由はあるのですがテーマと違うので割愛します)、ウェブよりテレビのほうが説得力がある使い道があるからです。

能動フィルターと深掘り型コンテンツ

ウェブの魅力は来訪者自身が「自分から能動的かつ積極的にサイトに来てくれる」ということが一番だと私は思っています。つまり「たまたま通りかかっただけ」という人は少ないということです。

自分から能動的に来訪

来訪者が能動的にサイトを訪問

例えば私の会社「デキサ」は映像制作会社ですが、映像に興味が無い人、もしくは映像に用がまるで無い人はそもそも検索エンジンで「映像制作」というキーワードで検索しません。動機を持って主体的に検索して探した人だけがサイトに来てくれるのですから、そもそも来訪者は映像というメディアに最初から興味を持っているわけです。これは不特定多数の人が目にする電車のつり革広告よりは、よほど効果があると思って良いはずです。
あとはどうやって自分たちの主張を興味深くアピールするかによって集客に結び付くわけです。

こうした「能動フィルター」がかかるメディアの場合、深掘り型のコンテンツが有効です。何せ「知りたい」という能動的な姿勢の持ち主を相手に情報を提供するのですから、中途半端な情報を与えたところで相手に失礼ですし、相手も満足できないでしょう。とにかく深い部分まで掘り下げた情報を与えることです。
これがマスメディアには無い、ウェブサイトというメディアのメリットであり、私がウェブという手段を気に入ってやまない理由です。コアかつニッチな情報を掲載して良いのなら、会社の規模や歴史に関らず、本当に知識や経験のある有能な人が良いサイトを作れるでしょうし内容として勝るのは自明の理です。これは公平な競争の推進という意味でも、むしろ「望むところ」と思えてならないのです。

このようにウェブと言うメディアは、多数の目に触れさせようとするより、むしろコアな層を少数確実に捕まえることを考えた方が効果的なメディアと言えるのです。ウェブを活用したマーケティングを考えるなら、この立脚点を忘れてしまうと、取り返しのつかない失敗をする可能性があります。

社会のイコライザーとしての機能

続いてこれも私見ではあるのですが、先にご紹介した「会社の規模に関わらず本当に知識や経験のある人が勝る可能性が高い」というメリットは、いわゆる「イコライザー」としてウェブ/インターネットが機能することを意味しています。
ウェブの世界に大企業も中小企業もありません。Googleの検索エンジンは会社の資本金を見て検索表示順位を決めているわけではないのです。あるのは来訪者にとって「有益な情報かそうでないか?」という価値観だけです。そうした意味では、比較的小規模な会社や個人が大企業に部分的にでも勝る可能性は高いと思います。私が言うイコライザーとは、こうしたウェブの公平性のことを意味しています。

先に私が否定して見せたように、ウェブの情報がマスメディアより早い必要などまったくありません。遅くても視点がユニークでロジカル、そして有益な情報であれば、そのウェブページはGoogleからも高く評価され、一定のトラフィックを得ることができるでしょう。反面、早さだけに固執して薄っぺらい情報を掲載していたらGoogleはサイトそのものの品質が低いとみなすかもしれません。
とはいえ、もしも「早さ」に固執すべき部分があるとしたら、それは「自分のユニークな視点は他人より先に公開したほうが良い」という点かと思います。Googleは、その論点が新しいものか、あるいは類似する内容がすでに他のドメインで公開されているかを検索順位決定のための変数として活用しているフシがあります。ここは少し注意が必要かもしれません。

また修正可能だからといって、無用な修正もできれば避けた方が無難です。修正が必要ということは、そもそも初回公開時点でその記事や情報の完成度が低いということですから、それはサイトのトラフィックの滞在時間を短くし、SEO的にも好ましいことではないはずです。焦らず無理せず、ちゃんと考えてオリジナリティの高いロジックを固めた記事を書いてから公開すれば良いのです。
ただし、修正ではなく加筆や更新は常に行っていきましょう。今は通用しないような古い情報が残っているような状況だけは避けた方が無難です。

お金が「かからない」のではなく「かけない」という姿勢

さらに言えば、ウェブサイトというメディアのメリットとして一般的に語られる「お金がかからない」というのも、「かからない」というニュアンスで考えるのではなく、「お金をかけてしまったらマスメディアと変わらなくなってしまう」と考えてみてはいかがでしょうか?
お金をかけて多くのプロが寄ってたかって記事を量産し、ページを増やしても、それはつまるところ「劣化版マスメディア」であり、ウェブサイトの本当の良さを活かしているとは言えません。それに、そんなウェブサイトならすでに大量に存在しますよね。見た目はスマートでも、通り一遍のコメントに終始し、中身の薄っぺらいサイトはゴマンとあります。

プロを活用するなら、自分の売り込みたい商品や、自分の会社を面白がってくれるプロに限ったほうが良いと思います。ことウェブに限ったことで言えば表面的なクオリティは評価対象とはなりません。ですから自分の会社や製品を理解してくれるプロを少数囲い込むほうがマーケティング的には成功しやすいのではないかと私個人としては考えています。

「個」のメディア

さて、上記で触れたように、必要以上に早さに固執する必要もありませんし、納得していない記事を焦って公開する必要もありません。ましてやお金をかけて記事を量産してスマートなデザインに仕上げたところで、そんなサイトはすでにゴマンと存在します。となれば、ウェブサイトの良さというのは、マスなものとは真逆という結論が見えてくるのではないでしょうか?

ここで、「個」というキーワードがウェブのメリットを語る上でのキーワードであろうと思います。「個」を打ち出し、マスとは相反するページ作りが勝利のカギを握ると提案したいと思います。つまり、サイトで紹介している視点が個性的で、あなたにしか作れないサイトこそ、本当に競争力があるのではないかと私は思うのです。

訪問者の共感を得やすいサイト、好感度の高いサイトを真面目に考えて、やっつけで作るのではなく「クソ」が付くほど真面目にサイトを作るという姿勢が、一見遠回りのようでいて、実は効果的なのではと私は確信しています。

 

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