映像制作の現場からタイトル
2026/3/25公開

動画生成AI終了は大英断

私たち映像制作者としては気になるニュースが本日流れました。OpenAI(米サンフランシスコ)が、近年何かと話題を呼んだ動画生成AI「Sora」を終了すると発表したのです。動画生成AIを世に普及させるためには、解決すべき様々な課題が残っていますので、この終了決定は順当な判断だと多くの人が感じているのではないでしょうか。

動画生成AIって何?という方々に向けて少し解説をしてみたいと思います。このAIはアプリやAPIとして皆さんのようなユーザーに提供されます。的確な出力を得るためには的確な入力を行う必要がありますので、使いこなしにはある程度の慣れが必要ですが、命令を受けてユーザーがイメージするような動画を生成してくれるため、時間をかけずにある程度のクオリティの動画(素材等)をユーザーは得ることが可能です。

仕組はどういうものかというと、ネット環境などから学習した多くのデータを基にして、命令されたタスクを実行し、新しいコンテンツを生成することができます。いわば学習済みのデータを基に「想像力(創造力?)」を駆使して新しいデータを生み出すのです。

私たちは、いわゆる制作者の良心をもって扱えば、これら動画生成AIには大きな可能性があるだろうと、その成長を長年にわたり見守ってきましたが、「やはり」というか、予想した通り、ネットの中はAIによって生成されたフェイク動画やパクリ動画だらけになってしまっています。つまり、ある程度のリテラシーを持つ使い手が使わない限り、こうしたテクノロジーはロクなことにならないのです。

パクリの温床にもなる

動画のAI生成は比較的歴史が浅いですが、テキストで言えば、もう普通にYahoo!あたりの検索窓でも実装されていて、例えば「CG制作費用」と検索するとAIがネットで比較的信頼性が高いサイトの情報を上手にまとめて文章化してくれます。
情報を検索する立場からすると大変便利な機能なのですが、問題はAIで得た情報をさらにカネをもらって売りつけるライターが現れたことです。クリエイターとしてのプライドはどこにいったのか?
例えば弊社デキサの同業他社のウェブサイトにテキストを書いているライターさんが、多分ですがAIにテキストを書かせていたのでしょうね、ウチのサイトのCG制作費用のページと瓜二つの内容になってしまっています。要するにAIを使ってリサーチをした事によって、うちのサイトのほぼパクリになってしまったわけです。AIはそこまで配慮していませんから、本来はウェブ制作会社のライターさんが気を回して、パクリにならないようにすべきなのでしょうが、安価なギャラでテキストを書いているライターさんにそこまで求めるのも酷な話かと。
この事実は、一応はその同業他社さんに伝えているのですが、その会社さんだっていい迷惑ですよね、ウェブサイトのテキストライティングにAIを用いるなんてことは、お金をもらって文章を書くプロとしてありえませんし、そんなライターを使っているウェブ制作会社って、どれだけクリエイターとしてのモラルが低いのかと思います。こういうウェブ制作会社を雇ってしまった会社さんは信用落としますし、悲劇ですよね。
つまり、こういったAIによるコンテンツの再生成が、低品質なライターの増産につながり、「パクリ(厳密には著作権侵害)」の温床になっているのです。

安全保障上の問題にもなりかねない

これが動画生成AIとなるとさらに深刻です。トランプ大統領が言ってもいない事を叫ぶ動画や、高市総理が宣戦布告を宣言する動画を生成することすらできるようになってしまいます。
メディアリテラシーが低い低品質なクリエイターは「面白ければ何でもアリ」という感覚で、こうしたコンテンツを大量生成してYouTubeあたりで流すことが可能です。先のCG制作会社のウェブサイトを担当したライターの例を出すまでもなく、メディアに携わる者のリテラシーは年々低下している実感があります。そんな低品質なクリエイターに動画生成AIを使わせるのは「●●に刃物」ということです。

また、何か悪意を持っている敵性国家や国内のグループがこうしたフェイク(捏造/偽)動画を使って国民を扇動するかもしれません。こうした技術はあまりに危険ですし、一定の法的な縛りなどルールの整備が必要と思われます。

そもそも悪意を前提とした考え方をするのは本当に悲しいことですが、昨今のメディアの状況を客観的に眺めていると、どうしても悪意あるクリエイターの存在を無視できないのです。選挙報道などを見ていると、新聞はまだしもテレビのような大手メディアでさえ客観的な報道ができていないように見えますし、ネットメディアもスタンスが偏りがちです。ネットは「オールドメディアが偏っている」と言うし、それには異論がありませんが、そのネットメディアだって、どこかに狙いがあるように感じているのは私だけじゃないでしょう。右に偏ろうが左に偏ろうが、どのみち何か「狙い」があって情報を流しているようにしか見えないのです。狙いが見え隠れすると、どうしてもその情報を素直に受け取るわけにはいきません。つまり私のように疑い深い人間は、「そこに何か悪意があるのではないか?」と感じてしまうのです。

もし悪意あるクリエイターがAIによる生成動画を使いこなせば何が起きるか?ただでさえ編集上のモンタージュでいくらでも印象操作など可能な上にAIで素材を捏造できるとしたら?こんな恐ろしいことはありません。
私は法的な縛りをある程度はすべきだと思っていますし、著作権におけるヴェルヌ条約のように世界各国が共通認識を確認し、各国の法律にそれを反映させるような仕組みが求められるでしょう。AIに関する欧州評議会枠組条約のようなものは存在しますが、あれも人権が云々という話なので、よくわからないです。

結局は使い手次第

●●に刃物という言葉があるように、便利な道具は結局、使い手次第で良い結果も悪い結果も生み出すということです。自動車だって凶器になりかねませんが、道路交通法に従って運転する限りにおいては大変便利で世界を豊かにする力になります。要するに使い手次第ということです。まずはAIの使い方を法的に縛ることも重要ですが、同時に安易なカネ儲けに走らないクリエイターの育成という点も、もっと真剣に議論されても良いように思います。

ぜひ多くのクリエイター仲間と共に、便利さに惑わされない、本物のクリエイティビティというものについて考えてまいりたいと思います。

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