映像制作の現場からタイトル
2024/9/26公開

今年は値上げせず据え置き

2024年10月から、また値上げラッシュですね。私たちの会社はとりあえず値上げはいたしません。というのも、すでに今年の4月に値上げを行っているためです。
半年ごとにジリジリと値段を調整できるのはエネルギーや小売り業だけです。映像の場合は半年や一年というスパンで制作を行うので、先々の物価を考慮して人件費等の調整を早めに行う必要があり、4月にガツンと上げておりました。例えばCGのモデリング費用などは、1人のCGクリエイターが1日8時間働いた場合の料金を1人工(にんく)として計算します。この1人工の料金は会社やスタッフの経験値によっても違いますが、概ね安い場合で5万円、高いと8万円くらいになります。弊社デキサの場合は3月末まで5万円だったところを、4月以降は7万円とさせていただいております。
4月には「少し高いよね」と言われていたのですが、今はもう「7万円だと標準的かな」と言ってもらえるようになりました。実際のところ、見積でお出しする数字というのは少し多めに出しているので、1人工=7万円で見積もった場合でも、納品する際には様々な追加作業が入り、結果として1人工=6万円以下になることが多いです。

細かく上げず一気に上げる

社長の私としては4月に値段を上げることについては消極的だったのですが、それでも10月から郵便も含めて物価がガツンと上がることが目に見えていたので、例えば4月に制作を開始した案件が納品になる頃には、その高い物価の中で仕事をすることになりますので、どうしても価格体系を上げる必要がありました。
弊社は値上げを年に1回に可能な限り収める努力をしています。さすがに数か月に1回ちょこちょこと上げるのでは、お客様も混乱するだろうと思うからです。下手をすると見積依頼を頂戴して提出した見積が、翌月には使えなくなってしまう可能性もありますからね。さすがにそれでは稟議にもかけられないでしょう。上げるなら上げるで、一気にガツンと上げて、ちょこちょこ価格体系が変わるのだけは避けたいと思っています。

値上げはすでに企業の義務

実際、この10月は郵便が15%ほど上がるようですし、医薬品も第一三共さんが品目によって6%から19%の値上げ。
また厚労省がジェネリック医薬品の利用促進のために自己負担額を引き上げるものがあります。例えばヒルドイドは555円だったものが813円になるなど大幅に値上げです。
うまい棒は12円が25%値上げで15円になります。これでも消費者は「すごい企業努力だ」と評価しています。
大手の火災保険も東京海上日動、損保ジャパン、三井住友海上、あいおいニッセイ同和損保、すべてにわたり10月から10%上がりますし2019年以来今回で4回目になっているわけです。10%と言っても、それが数回行われているなら、かなり大きな違いだと思いますし、それが人件費に反映されていないのはおかしい。

電力料金の推移

電力だけ見ても2021年7月にkWhあたり21.83円だったものが2023年1月には31.25円と、1.6倍にも高騰しています。(上図新電力ネットより)その後燃料費が安定したため下がりますが、それでも25円前後で推移しています。
こんな状態で全ての分野で値上げが起きているので、実感としてはここ2年くらいの間で数パーセントというのは楽観的。2020年比で2024年8月の物価の総合指数は109.1となっています。特に生活に直結する食料についてはこの1年間で(2024年8月の前年同月比)120に近いという深刻な状況です。これで「企業努力」という名の元に価格を据え置くとしたら、社員や下請企業に対する支払を含めた責任はどうなのか?という大問題に発展する可能性があります。

クリエイターを守るためにも

この状況で給与やギャラを上げないとなれば、それはもう制作会社やデザイン事務所としての体質を問われる事態になりかねません。普通ならこれだけ物価が上がっているのだから、価格を上げることについて「言い訳は無用」というのが本来の姿です。弊社も仕方がないので、年に一度は相場を引き上げる姿勢でおります。来年度はまた景気動向や物価指数の成り行きを見ながら、価格体系の見直しを行いたいと思います。まずは優秀なクリエイターを守るためにも、必要なお金をキチンと流す、そうした姿勢が制作会社には求められています。

お客様各位には、こういった事情をご理解いただき、いつも感謝しています。お客様だって物価高騰のあおりを受けて懐事情もよろしくないタイミングで、快く私たちの立場をご理解いただき、お支払いを頂いている事について、本当に感謝感謝という一心です。その後恩に報いるように私たちスタッフ一同、がんばりたいと思っています。
また、物価がこのように上がっている時期は、早いうちにご依頼をいただければ、それだけ安価に優れたコンテンツが作れるという事もアドバイスとして申し述べたいと思います。

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