映像制作の現場からタイトル
2019/9/27 公開

AMDのThreadripper2990WXってどんなCPU?

去年あたりから私らパソヲタを騒がせている存在があります。それがAMDという半導体メーカーから販売されているThreadripperというCPU。

AMDというメーカーは特にパソコンのことに詳しくない方は聞いたこともないメーカーかもしれませんが、あの有名なインテルのライバルという立ち位置の会社です。インテルが有名すぎるのでAMDはその陰に隠れてしまう存在ではあるのですが、なかなかどうしてクオリティの高い仕事をする会社で、近年は秋葉原あたりのパーツ売り場においてはインテルの優位を脅かすほどの存在になっています。

ではこのAMD、一体どんなCPUを作っているのでしょう?

AMD_threadripper2990wx

32コア64スレッドCPU「Threadripper2990WX」

CPUというのはコンピュータの論理回路にあたる部分で、こいつの動作する周波数が高ければ高いほどコンピュータは単位時間あたりで多くの仕事をこなすことができます。とはいえ最近では周波数を上げることは限界に達したため、一個のCPUの中に複数の回路を作り、その複数の回路に処理を分散する方法をとっています。
例えばデュアルコアなら2つの回路に分散、クアッドコアなら4つの回路に仕事を分散させます。

高価なお仕事用のCPUになると、このコアと呼ばれる回路が6個だったり8個だったりするのですが、去年AMDが発表したThreadripperというCPUの製品群の最上位機種は、何とこのコアを32個搭載しているのです。
しかもこのシリーズはプロ用というよりは、どちらかというとアマチュアのユーザーを狙ったデスクトップPC用の上級モデルという位置づけのため、実売価格が20万円弱と、恐ろしく安い。ちょっと前のインテルの、お仕事用としてもちょっと特殊としか思えないトップエンド製品である28コアCPUが100万円を超えていたのと比較すると、お買い得にも感じます。

ということで、どんなもんだか買ってみましたThreadripper32コア。

CG屋にとってCPUは速さが正義

何で私らクリエイターが新型のCPUが出るたびに注目するのか?それは私らCGを作る会社の場合、CPUは生命線だからです。

モデリングはグラフィックボードに負担がかかる作業なので、グラフィックボードさえQuadroとか三次元の画像化に適したものさえ搭載しておけば、結構テキトーなパソコンでもできるのですが、モデリングが終わって実際の動画ファイルを描き出す「レンダリング」という段階になると、コンピュータは速ければ速いほど嬉しい。何せモデリングが正しくできているかどうか?一回レンダリングしてみないとわからないのです。試しにレンダリングして、それで不具合を調整し、さらにまたレンダリングするといったように複数回のレンダリングを行うので、ここで時間を取られると、納品が間に合わなくなってしまう危険性すらある。

これまで弊社が使っていたコンピュータのCPUは8コアのものです。この8コアのコンピュータを並列に複数台つないで、それぞれのCGのシーンの計算量に合わせて32コアで使ったり、64コアで使ってみたりと、その時々の仕事に応じてネットワークの編成を変えてコンピュータを使うわけです。ところがこの編成を変えるのがちょっと面倒だったのです。そこにThreadripperが登場したものだから、「もしかするとこれ一台で何とかなるなら楽だな…」と考えたわけです。

>>参考リンク★CG制作についての詳細

Threadripperのレンダリングは速いか?

結果から言うと、とても速いです。期待通りの性能が出ていると思って間違いありません。ソフトとの相性を指摘されることもあるようですが、弊社が仕事で使ってるソフトはマルチスレッドにはかなり高度に最適化されたものが多いので、あまり悪さをせず、コアの数が増えた分、速い動作をしています。
細かいベンチマークは色々なショップや記事でやっているでしょうし、そんなのを聞いても参考にならないでしょうから、CG屋ならではの視点からその速度をご紹介します。

shadeでの速度

国産CGソフトとして長年にわたりCG入門者たちを魅了してきたソフトです。最近高額化とサービスの低下が問題視されますが、このshadeのマルチスレッド対応は「神レベル」で高いです。ですのでコアの数が増えるごとに倍々ゲームでレンダリング速度が上がってきました。つまりshadeを使う限りはCPUのコアは数が多いほうが正義という図式です。

今回Threadripperに乗り換えてみると、コアの倍数分だけレンダリング速度がキレイに比例して上がっています。ほぼすべてのスレッドが常時100%稼働率で回り続けます。

3dsmaxでの速度

外国製のソフトですが業界ではポピュラーなのが3dsmaxです。こいつはあまりCPUの使いこなしが上手くないのか、CPUを休ませてしまうタイミングが多く、コアの数が増えたからといってその分素直に速度が上がるかというと、そうでもない雰囲気です。これ以上は、見ただけでは何とも言えないので、細かい検証が必要ですのでコメントは差し控えます。

余談になりますが、3dsmaxを使うなら搭載メモリは64GBで十分です。私のマシンには現状128GBのメモリが載っていますが、ここまでは使うことはなさそうです。
新たに搭載された流体シミュレーションプラグイン「Maxリキッド」を使っていても、メモリが64GBを超えることがありませんでした。

以上、参考になればと思います。

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