2025/10/10公開
資本金一千万円未満の番組制作会社からの下請
先日、うちの会社で臨時役員会がありました。議題は要するに「一千万円未満の資本金の同業者(つまり映像/番組制作会社)」からの「下請仕事」を、これまで通り請けるべきかどうか?という議題でした。ウチも結構な数のテレビ関係のグラフィックスの仕事を下請けでやっているのですが、あまりに卑しい手法の詐欺のような下請法違反がテレビ業界(テレビだけじゃなく映像業界全般かな…)でまかり通っている様子なので、ウチの会社が被害にあわないために自衛策として、映像制作関連や広告関連のお客様の場合は資本金一千万円以上の、つまり…
「下請法でウチの会社が守られる範囲の資本規模のお客様からしか仕事は請けない事にしよう!」
という主旨です。
ウチは映像制作会社ですが、制作以外にも自社で3D-CGやイラストを自前で作っています。
世の多くの映像制作会社はそういう事は専門のCG屋やイラスト屋に任せています。私たちデキサもそういった他の映像制作会社からCGやイラストの仕事を下請しているので、他の映像制作会社から見ると弊社は下請のCG屋やイラスト屋という側面もあるわけです。
実際にこれまでにも多くの案件をテレビ局やテレビ番組制作会社から依頼されて、CGやイラストを下請として作ってテレビ番組に供給してきました。(>>取引先一覧)
もちろん資本規模が大きいテレビ局や、大河プロダクションさんやザ・ワークスさんなど大手番組制作プロダクションは支払もしっかりしているしコンプライアンス的にも善処してくれるのですが、反面、資本規模の小さいテレビ番組制作会社は仕事をさせるだけさせておいて、納品してから難癖をつけてきて不当減額をしてくる場合が過去の実績からも確実に多いのです。しかもこの15年くらいの間に思い出せるだけでも3回以上こうした事が起きており、5年に一度もの頻度で数十万円から数百万円という桁の損害が出てしまうと、私らのような零細の小さい会社からするとシャレにならないという事情があります。例えば百万円の損でも、本当に建て直すのに数年かかってしまう。
下請法の盲点を突く姑息な脱法行為
もちろん下請法という法律がありますから、後でお金をケチるような「不当減額」は違法行為なのですが(>>下請法の詳細)、下請法はその会社の資本金が低い場合は免除されるため、最近の番組制作会社は資本金をわざと低くして、下請法を守らないで済むようにしているのです。買い叩きをしようが不当減額をしようが、下請法にひっかからない資本金の小さい会社ですから、まさにやりたい放題。それこそ脱法行為が生んだ無法地帯です。
例えば実例を紹介すると、動画配信サービスを手掛ける超大手企業から、資本金100万円に満たないような超弱小の番組制作会社に直接仕事が流れるようなケースがあります。これ、普通に考えたら絶対に不自然ですよね???しかもなぜか企画/演出(事実上の制作スタッフのボス)は在京のキー局の制作局所属の局員ディレクターがやってたりする。
制作スタッフのボスがテレビ局の局員ディレクターならば、それは事実上テレビ局が制作主体でしょ?ならばテレビ局が動画配信サービス会社から直接制作を請け負えば良いと考えるのが普通ですが、いやいや、そこは資本金が100万円以下の小さな映像制作会社を元請けにするんです。そうすることでウチのような下請にCGやイラストの下請仕事をやらせるだけやらせても、最後にひっくり返して値切れば良い。下請法にも引っかからないし、ウチみたいな下請は泣き寝入りですよ。
相手の会社が利益を残していなければ、ウチのような会社がいくら裁判で争っても「無い袖は振れない」ということで終わりでしょうし、最悪は会社を潰せば有限責任ですからそれでおしまい。
私もそんなことは分かっているので、あえて突っ込んで裁判などやっても時間とカネの無駄だからしません。「支払える分だけ支払ってもらえれば御の字」というのが現実です。
上記の実例では、以下のような手法がとられています。
・最初に相談してきた窓口担当者はテレビ局の名刺で自己紹介している
・テレビ局の前でハードディスク等の素材の受け渡しをしている
・契約書が無い
・急な発注で当社に無理にスケジュールを空けさせている
・最初は50カットの仕事だったのに後からどんどん追加して最終的に95カットとなった
・テレビ局の仕事だと思っていたら後から制作会社の仕切りだと説明がある
・制作会社に請求書を出しても連絡がまるで無い
・その制作会社にはウェブサイトはあるが電話番号が無い
・窓口担当者に何回も電話をしても代表者から電話が来ない
・納品から60日近く経ってから制作会社の社長からメールがあり減額要求(下請法適用なら不当減額)
・電話が来たため下請法違反である旨通告すると資本金は百万以下のため下請法は関係ないという
・検収が済んでいないため支払う義理はないとのこと(下請法適用なら第2条違反)
・やたらと顧問弁護士同士で話し合おうと言う
上記を見ると、すごいですよね。騙す気満々です。例えば「契約書が無い」など、業界の悪しき慣例がたまたま悪い方向に働いてしまったと思われるものも含まれてはいるのですが、業界の外の常識人から見るとグレーどころか悪意に満ちたブラックに見えることでしょう。
まず最初に来たのがADさんで、局のロゴが入った有名番組の名刺で依頼をしてきます。在京キー局のロゴが入った名刺なら誰でも信用しますよね。で、企画立案や演出はこの在京キー局の制作局のディレクターがやっているというわけです。信用しますよ普通は。
続いて、わざわざテレビ局の前に私を呼んで、番組の資料や素材をコピーしたハードディスクを渡すんです。普通にテレビ局が仕事の相手だと思うでしょ?
ところがですよ、局はまったく仕事やお金の流れの中で関係なかったんです。大手動画配信サービス会社から直接仕事を請けているのは資本金100万に満たない弱小の制作会社。ですから下請法もまったく関係なく、ウチとしてはいくら法的措置に出て頑張ってもまず回収は不可能というパターンです。
相手は「検収が済んでいない」と言いますが、これも相手の法律逃れです。下請法の適用なら「検査するかどうかを問わず」という注釈がつくので、支払義務が生じます。
親事業者は,下請事業者との合意の下に,親事業者が下請事業者の給付の内容について検査するかどうかを問わず,下請代金の支払期日を物品等を受領した日(役務提供委託の場合は,下請事業者が役務の提供をした日)から起算して60日以内でできる限り短い期間内で定める義務があります。(下請法の第2条)
ギリギリの納期で指定してきてその納期までは当社はスケジュールを空けて対応していたのです。なのでその間にこちらに修正依頼を出せば当社は修正を行えたのですが、私たちに空けてほしいと言ったスケジュールより後の日程でさらに仕事をしてほしいと言われても、人員を回せないのはわかるはず。当社はやれるだけの仕事をやったので誠意ある対応は行っていました。
また、やたらと「顧問弁護士が云々」と言うのも、こういった悪意ある会社の特徴です。そもそも資本金が100万にも満たない会社で顧問弁護士に毎月料金を支払うのは非効率なので、普通はそんなものは置いていません。ずいぶん昔ですが、通販番組の制作で反社の会社に騙された時も同じですが、こういう会社は「ケンカ上等」の姿勢なので、顧問弁護士を置いて法律家と組んで、まさに「法律スレスレで騙す気満々」という精神構造なのです。マトモではありませんから距離を置くのが一番です。
本当に苦しい人は助けてきたデキサ
私たちとしては、お客様が本当に「お金が無くなって支払えなくなりました」という事なら、支払を待って差し上げるなり分割で払ってもらうなり、多少値引きして負担を楽にして差し上げるなど、色々な方法を提案してきました。
もっと言えば支払不能となった会社さんに当社から仕事を御願いして利益を出していただき、そこから少しずつお支払いをいただくなど、お互いに助け合うことすら過去にはやってきました。
また、ウチからの仕事を請けてくれる協力会社さんに対しても、困っている時は発注時に先に半額支払うなどお互い様という精神で助け合ってきました。だからウチの仕事を皆さん気持ちよく優先してくれる。そういう協力会社さんもいるんです。
私たちだって零細ですから運転資金に困るという事はあります。ですから、相手に対しても誠意があれば誠意で応えます。しかし、そうではないケースがこの10年ほど増えています。お金は持っているクセにわざと資本金を小さくして、下請法を無視し、下請に入った私たちのような零細の会社を騙して吸い上げる前提で会社を作っているのです。本当に禿鷹のような卑しい卑屈な経営者が世の中には存在します。こんな反社会的な会社の仕事を請ける筋合いがウチにはありませんから、とっととそんな連中は客から排除しましょうというのが今回の主旨です。というか、お客様から排除どころか業界から排除したいので、週刊誌でも何でも、私に聞き取りしたいという記者さんがいたら、お話しますよ。
お断りする条件
まっとうに仕事をされている零細の同業者の方々には申し訳ないのですが、もう性善説で仕事をするのもゲンカイがあるように感じています。そして相手を信用して損をして我慢するのは嫌になっています。ですからそろそろ、厳しく線引きをさせていただきます。ウチの会社では以下の条件が重なる会社からの下請仕事はお引き受けしません。
①テレビ番組の制作会社か広告映像の制作会社
②資本金一千万円以下
※ただし2025年10月現在までに過去2回以上の取引と支払実績がある会社様を除く
上記の二つの条件が重なる会社は今後、ウチは下請に一切入りません。ただし2025年10月現在までに過去2回以上の取引と支払実績がある会社様は資本金一千万円以下でも除外対象から省きます。
また基本的に個人さんからのお仕事はこれまでもお断りしていたのですが、こちらも継続します。やはり個人のプロデューサー等は法律への理解が乏しい方が多くて「不当減額」「不当な内容変更」「不当なやり直し」などが多発し、現場運営がブラックになりがちです。
所感~オールドメディア業界のモラル劣化も末期症状
もうそろそろ、この業界、特にオールドメディアと呼ばれる業界のモラルも、言葉に言い表せないほど、筆舌に尽くしがたいほど、劣化してしまいました。まだ昔のように体育会系で徒弟制度バリバリの時代はマシでしたよ。少なくともお互い敬意があったし、制作会社も協力会社(下請)に対して「親分」としての自覚があって、何とか手間に見合う料金を払おうという気概があった。今の制作会社は本当にダメなのが増えた。自分が儲けることしか考えていないから「いかに下請法を脱法するか」しか考えていない。
私は政治家に提案したい。もう資本金で下請法の適用範囲を決めるのをやめたらどうか?特に映像業界の場合は資本金はバラバラで元請けだから資本金が高くて下請だから資本金が安いという事はありません。下請法から資本金条項を消したら良い。ウチも資本金は安い会社ですが、60日以内の支払などを含め下請法は守っています。ぜひ国会でこれをやってもらえると助かります。私も地元の先生方に精力的に働きかけていきたいと思っています。


